第9話
ここでまた自己紹介。
「私はサルヴィア・ビジュー。薬とか作っているの。今日は納品に行っていてちょっと遅くなっちゃったのよ。夕飯、楽しみにしているわね。ちゃーんと支払うから安心して!」
「俺はマーロウ・カヴァジー。ここのクランの交渉役や材料調達なんかを一手に引き受けてるんだ。料理するなら、これからは食材の調達とかも俺がやることになるのかな? 守備範囲外でもレディには親切にするよ。あと、俺の分も頼むよ。もちろん支払うさ!」
美女さんから手を握られフニフニと揉まれ、タラシさんからはウインクを受けた。
そして、お二人の料理も作ることになったみたいだ。
というわけで全員分作ることになった。
最初に作った冷めちゃったヤツは、罰として(?)文句を言ってたオジサンさんが食べることになった。
スープは多めに作ったのでヨシ、アレンジ肉野菜炒めのみを全員分作った。
作るうちにだんだん要領がわかってきた。あと、オタクさんが台を作ってくれたのが非常に助かった。
「オタクさん、ありがとう!」
「次は、あんなやっつけ仕事じゃなくて全面改装するから! ちょっと待っててね!」
って朗らかに言われたよ。オタクさん、いい人だった。
お盆があったので全員に渡してそれに配っていく。社員食堂みたいだな。
行き渡ったところで、席に着いて食べる。
「めちゃくちゃいい味付けじゃん!」
「ソースがいいわ~」
「スープもうまいよ!」
なんか、懐かしいくらいにガヤガヤしてるな。料理屋を思い出す。
一人で切り盛りしていて、カウンターで八席しかないすごく小さい料理屋だったんだけど、常連さんもいたし、作り置きはほとんどいつも売り切れになってた。
なんだか無性に料理が作りたくなってきたので、食べ終わったあとにまた料理を作り始めたら、スミスさんがやってきた。
「サーシイ、まだ作るのか?」
「なんかわかんないけど、懐かしくなったの。そしたら作りたくなったの」
スミスさんがなんともいえない表情になり、そして曖昧に笑った。
「そっか。……あんま、無理すんなよ」
「うん。今はパッションのままに動くの」
そう言ったら、今度は声を出して笑った。
いくつかの野菜でナムルを作った。あと、しぐれ煮。
そしたらパーラとプールにねだられて困った。
「これは、冷まして味をしみこませて食べるの! 作り置きおかずなの!」
「味見! せめて味見を!」
「なーん!」
プールはともかくパーラとか、お前そのクチバシでどうやって完食したんだと思うくらい、スープの一滴まで飲み干してるのよ。どうなってんだ。
ほんの少しだけあげて、あとは貯蔵庫にしまう。
後片づけもして、台から下りる。
「うん、楽しかった!」
そう言ったら、パーラとプールが私に頭をこすりつけてきたよ。
……もしかしてふたりとも、心配だったのかな。
私が記憶喪失になっちゃって、名前も覚えてないような状態で。記憶喪失前もボケてたみたいだし。
「ごめんねえ。そのうち思い出すかもしれないから、気長に待ってて?」
「いいんです。ご主人様が元気なのが一番ですから」
「なーん……」
ふたりがぐりぐりと頭をこすりつけながら返した。
*
「サーシイちゃん、寝るときのお洋服ができたわよ」
後片づけをしていたら、女装さんに声をかけられた。
「わあ! うれしいです!」
「よかったら、その大人用の服も預けてくれたら、あなたのサイズに作り替えられるわよ?」
マジか!
「女装さんすごい!」
「ジョシーよ。サーシイちゃんって、スミス以外の名前の発音をちょっと間違えるわよね」
と言われた。うん。単に覚えた特徴で呼んだだけ。
もらったのは、ネグリジェとドロワーズ。
フリルがたくさんで、ものすごくかわいい!
「すごーい! かわいー!」
「喜んでもらえてよかったわ。他にも作ってるから、楽しみにしていてね!」
「ありがとうございます!」
女装さん、めちゃくちゃ腕が良かった。
*
屋根裏部屋に引き上げ、パーラと話す。プールは膝の上だ。
「調味料の作り方は、なんとしてでも思い出さないとなんだよね」
「ご主人様、なんか書いてましたよ」
「だよねー。私、そういうのを書きとめるタイプだもん。でも見返さない」
「そのとおりですね!」
って同意された。
「探してきます! あと、他にもなんかあったら持ってきますから!」
「なーん!」
そう言うと、屋根裏部屋の扉を器用に開けて外へ飛び出したよ。
「えー……」
いいけど。朝までには帰ってきてね……。




