第7話
「最低限の生活道具は揃ってるけど、なんか買うモノあるか?」
とスミスさんに尋ねられたので、
「うーん。外出用の服はこれしかなくて、あと、寝るとき用に大人向けのワンピースっぽいのを持ってるだけなんです。だから、お洋服がほしい」
と答えたら、
「あら。洋服なら私が作ってあげるわよ?」
と、女装さんが言ってくれた。
「えっ。……でも」
一から作るなんて高そう。
躊躇ったら、
「毎回は無理だけど、寝る服とおしゃれ着の数枚なら、サーシイちゃんは小さいから余り布で作れるもの。私、料理以外は得意だから、そのくらいサービスしてあげるわよ」
って言ってくれた!
「わぁ! ありがとうございます! よろしくお願いします!」
こんなバトルモードの町に、はたして幼女の服があるのかと内心思っていたので助かった!
「じゃ、服はそれでいいとして。他にあるか?」
スミスさんが改めて尋ねる。
「んーと、お腹が空いたし料理が作りたいです。キッチンを見せてもらって、材料を買ってきます」
って言ったら驚かれたんですけど。
「料理が作れるってマジなのか?」
ってスミスさんが聞いてきたよ。
「キッチンによります!」
と、キッパリ言った。
さっきチラッと見たときは前世の厨房に似通っていたけど、違ったら使い方を勉強するところから始まるからね。
あと材料。
最悪、切って焼いて塩を振れば食べられるからいいんだけど。
オタクさんの目がキラキラした。
「キッチンは俺が作ったから解説するよ。さ、行こう!」
張り切ってます。さすがオタク。
キッチンに入った。
すごく綺麗だ。まるで新品のよう。
「えっと、水は出るの?」
水道っぽいのがあるので尋ねると、オタクさんが張り切って解説する。
「出るよ! これは、術式で清らかな水が一定の水量で出るようになっているんだ! しかも、流れ出た水は浄化の術式のある排水口を通って外に排出されるようになっているんだよ」
「オタクさん、火のほうは?」
「オルトークだよ。なんか微妙に発音が違うけど、まぁいいや。火はこの魔導具! タッチすると火が出るんだよ! しかも、三つあるのにどれも火力が違うんだ!」
と、得意そうに言われた。
「じゃあ、火力の調整はできないんですね」
って何気なく言ったらオタクさんが固まった。
「えーと、こう、ツマミでもダイヤルでもいいんですけど、火力が弱火、中火、強火って変えられたら便利なんだけどなって思って」
オタクさん、固まったままだ。
「……あの、ごめんなさい?」
とりあえず謝ったら、唐突にメモを取り出しガリガリと書き出したよ。
そして、ブツブツ言いながら背を向けて去っていった。
「……どした? アイツ、なんか熱中モードに入ったけど」
って、交代でスミスさんがきたよ。
「コン……火の魔導具について尋ねたら、急にいなくなりました」
コンロって言いそうになっちゃったよ。通じないからやめよう。
水の魔導具もねー。水道とか蛇口とか言いそう。気をつけよう。
「ふーん……。で、使えそうか?」
「踏み台がほしいです!」
微妙に高い!
スミスさんが笑った。
鍋類はあった。新品のよう。
冷蔵庫っぽいのもあった。正確には食料庫みたい。何も入ってない。
他、棚も見た。
食器類はあった。使われた形跡がない。
だけど、食料がない。調味料すらない。
あるのは、賞味期限のない無機物ばかりだ。
「徹底して使われてない?」
私が首をかしげると、スミスさんが重々しくうなずいた。
「このクランハウスを借りて以来、誰も使ってない」
「何故!?」
オタクさんが作ったんでしょ!? めっちゃ自慢げに説明したたのに、なぜ!?
スミスさんが重々しく理由を述べる。
「全員、料理が苦手だ。嫌いっつってもいい」
そうなんだ?
「……うん。私は作るから」
すると、急にパーラが喋りだす。
「ご主人様は、料理が得意でしたよ!」
「……それ、記憶喪失前の私でしょ? 私、記憶を失ってるからわかんないよ」
「あっ、そうでした……」
パーラが萎れる。なぜかプールも萎れる。
スミスさんがパーラとプールを見て頭をかく。
「とりあえず、買い物に行くか?」
「あっハイ。そうします!」
何もなさすぎるからね!
スミスさんとお買い物に行く。
いろいろ買ってもらい、しかもスミスさんが払ってくれた。
「俺の分も作ってくれねーか?」
ってことだったので、
「失敗したらごめんなさい」
って先回りして謝っといた。
食材は……似た感じのはあるけど、味も食感も熱を通したらどんな感じに変化するのかもわからないので、失敗する可能性が高いのよ。
失敗して作り直しになった時のため、材料を多めに買って厨房に戻ってきた。
「無難にいこう、無難に」
って思ったのに、パーラが騒いだ。
「懐かしの味付けでお願いしますよ! 調味料、入れときましたから!」
「ハイ?」
首をかしげた後、ハッ!と思い至ってポシェットをさぐる。
ちなみにこのポシェットは、記憶があったときの私が錬金で作り出した魔法鞄、らしい。もう一つのボストンバッグ型魔法鞄と連結していたりする、らしい。その辺はパーラが語ったのでフンフンと聞いてうなずき、渡されたので持ってきただけ。
そのポシェットを探ると……。
「味噌!」
ドドン!
「醤油!」
ドドン!
他にもスパイス類(調合したのもあった)、いろんな調合調味料やソースが出てきた。恐らく料理酒であろうワインや、清酒っぽいのもあったよ。
「うーむ」
いつ作ったのだろうね? 腐ってはいないようだけど……って、元は魔女だから防腐の魔法とかかけたのかもしんないな。
「ごはんは専用の器に入れてほしいですー」
「なぁ~ん」
ってふたりが言うんだけど……あ、それも鞄に突っ込んであるのね。了解。
このポシェット、猫型ロボットのポケットみたいだなと思いつつポシェットから器を出す。
「シンプルに、塩のみの肉野菜炒めとかにしようかと思ってたけど……」
「えーっ!」
「なーん!」
パーラとプールがから非難の声が上がったし。
「うーん。この調味料を使えってことね。わかったわかった」




