第5話
またもやあの食堂っぽいエントランスへ行く。
「じゃ、さっきも紹介したが、新しく加入することになったサーシイだ」
さすがに二回目の自己紹介はしないよ! 軽く頭を下げるだけにした。
「あのケバい男がジョシー・ルージュ。俺とこのクランを立ち上げた悪友。アイツがサブリーダーだから。身の上話をして泣かせてやれ」
するほどの記憶がないよ。
「あの突っかかってきた男がソーン・ブライ。あれでも二十五歳だ」
「えっ! オッサンやん!」
思わず言ったら思いっきり睨まれた。
「オッサンなのに幼女に突っかかってきたの……? 大人げない……」
とさらに言ったら、
「……大人げない……」
と、愕然としていた。
スミスさんはスルー。
「その大人げない男の隣のモジャモジャが、フェルム・オルトーク。道具で使い方がわからないのはアイツに聞け。道具に限っては、親切に教えてくれるよ」
「どうぐにかぎっては」
つまり、オタクなんだろうなって理解した。
「で、一見常識人に見えそうなアイツはセオ・ヒムテリー。うちで一番若かったけど、サーシイが入って二番手になった」
「いっけんじょうしきじん」
つまり非常識ってことですね。
という、『うわあ、癖者揃いなんじゃないかな』と思った自己紹介が終わった。
「んじゃ、とっとと検査を済ましちまおう」
って言われて首をかしげる。
「検査って、危ないヤツ?」
「ギルドのはな。少なくとも魔物も知らない幼女にやらせるモンじゃねえ」
女装さんがキュッと眉根を寄せた。
「まさかあの女、この子に正規の検査をやらせようとしたの?」
「そうだよ。記憶がなんもねー、魔物を知らねー子にやらせて、おまけに【叡智の尖塔】にブチ込もうとしてた。それを咎めても『だから何』って態度だ。だから連れて帰ってきた」
「……そういうこと……」
女装さんがため息をつく。
「しょうがないわね。じゃあ、アタシも一緒に見るわ」
スミスさんが肩をすくめる。
「どうぞ、ご勝手に」
検査ってなんだろうと思ったら、モジャ頭さんがイソイソと道具を持ってきた。
「これは、俺が作った検査装置。ギルドに卸してるのより高性能。この町のギルドはケチだからね、簡易版しか使おうとしない。ま、連中としては誰がどんな能力を持っていたとしてもどうでもいいんだろうけどな」
早口だ。オタクだ。
「これは、力の測定器具。これを握って振り回すと、どれくらいの力があるかが測れるんだよ。最初は軽いけど、だんだん重くなっていくから気をつけて」
「はーい」
渡された測定器具は、前世の握力計に似ていた。それを握ってブンブン振り回す。楽しい。
「はい、もういいよ。左右やるから、まず右手のほうの数値を書くね」
オタクさんは、道具がからむと非常にフレンドリーだわ。さっきの無関心さはドコに消えた?
そう思いながら返した。
「えーっと……ん?」
オタクさんが笑顔で固まる。
スミスさんが記録しようとボードを片手に覗き込んで、やはり固まる。
「どうしたのよ……って。……ちょっとコレ、壊れてるわよ? 数値がめちゃくちゃじゃない」
って女装さんが言った。
「そっか、ちゃんと測れなかったんだ」
オタクさん、無言で何か操作して、自ら振り回した。
「合ってるから」
低い声で値を見せる。
「「…………」」
スミスさんと女装さんが顔を見合わせた。
「……再検査か?」
「左手を測ろう」
と、また渡されたので左手で持って振り回す。
「「「…………」」」
また三人が黙る。
「さっきよりひどくない?」
「言っておくけど壊れてないよ。メンテナンスしてるから」
「うーん……。でも、ジョシーよかはねーだろ。適正範囲内ってことにしよう」
とか、三人でコショコショしゃべってます。
検査結果、どうだったんだろ?
「私、どのくらいでした?」
ウズウズして話しかけたら、スミスさんが私を見て、
「んー……。まぁ、普通の幼女より力持ちって感じかな」
「わぁ! やったー!」
どうやら、幼女にしては力が強いみたい。幼女化したけど、スペックは元のままって感じ? 強くてニューゲーム的な?
事故った薬品がどんなものでどんな作用をしているのか知らない(記憶があっても失敗したからわからないと思う)ので、今の幼女状態がどうなのかわからないのよねー。
「他は何をやるの?」
ちょっと楽しくなってきた。
「お次は魔力測定でーす」
と、オタクさんが箱に乗った水晶玉みたいなのを私の前に置いた。
「これはすごいんだよ。魔力が数値化してわかるし、さらにはある程度の適性属性もわかるんだ! 保有魔力と魔力の質を測れるのは、今までにない画期的な……」
すごい早口で、途中から聞き取れなかった。
ポカーンとしていたら、スミスさんが要約してくれる。
「つまり、これを触れってことだ。……魔力の出し方とかわかんねーだろ?」
「わかりません!」
「そこは追々だな。ひとまずは、質を測るか。多少漏れ出てる質でも測れるって豪語してるからな」
オタクさんがドヤァってしてる。
「えーと、この丸い玉に触ればいいんですね?」
と、言いながら触ったら。
「わぁ! 派手!」
水晶玉が虹色に光ってる! 虹色ネオンボール!
「「「…………」」」
「……さすが、使い魔がいるだけあるわ」
と、スミスさんが呟くと、女装さんが驚いた。
「えっ、その魔物たちって使い魔なの!? ペットじゃなくて!?」
「失礼な! そんなものと一緒にしないでください! 私はご主人様に仕えているんですからね!」
「シャアアッ!」
と、ふたりが怒る。
「うわ! しゃべった!」
オタクさんも驚く。
「鳥はしゃべるでしょ」
と、私が言うと、
「しゃべんないよ!」
と返された。……そうなの?




