第23話
〈その後のメンバーの様子〉
スミスは、サーシイと使い魔が完全に離れたのを見届けると、お盆を持って部屋を出る。
そして、ソーンの部屋に行った。
「ホラ、サーシイからの差し入れだ。使い魔たちにバレないうちに食えよ」
「…………」
ソーンは今日、ほとんど食べてない。
落ち込んでいたからだ。
使い魔に怒鳴られたことが当たっているから反省するしかない。
憎まれ口ではなく本当にそう思ったから。
たかが散らかった部屋を片づけ置いてあった料理を食べたくらいで何を怒っているんだと、朝から騒ぐほどのことではないと、そう思った。
だから言った。
それは、あの新入りの幼女を舐めて見下した発言だと使い魔たちは激怒した。
実際舐めて見下していたし、新入りなんだから自分たちの汚した部屋を片づけ料理もしろ、そうしてこのクランにいる価値を表せ、そう上から目線で考えていたことを見透かされたわけだ。
結果、『サーシイが提供する一切のことはソーンは恩恵を受けない』という話になった。
別に、料理を食べなければいい話だ。
今までどおり、料理店に行って不味いメシを食えばいいだけ。
他の連中が食っている最中、自分が除け者にされるのなんて今までもあった。
だが、幼女が言った言葉が自分を突き刺す。
言った当人は、嫌みでもなんでもなく思ったことを口にしたという態度だった。
それは、自分と同じだ。
自分も思ったことを口にしてきた。言って何が悪いと思った。
言われて気づいた。言ったら悪いこともあると。
ソーン・ブライはお盆に目を落とす。
「……これ、アイツがリーダーに作ったんでしょ?」
「まぁな。俺の体調が悪そうだったから、食べてあったまってくれってさ」
「でしょうね。俺が体調悪くたって、気にもかけないだろ」
「それはどうかな。お前はあの子の体調が悪くても気にかけないだろうが、あの子は気にかけると思うけどな」
スミスにチクリと言われ、また黙る。
拗ねているのはわかっている。
二人食べていないのに、スミスにだけ差し入れしたのが気にくわないのだ。
自分が言ったことなのに、気にかけられないと拗ねるなんて子どもじみている。
それもわかってる。
「いらないか? なら、俺が食うけど」
「いら――」
断ろうとしたとき、腹が鳴ってしまった。
スミスが笑う。
「食っとけ。そして、明日ちゃんと謝れ。あの子に謝らなくていい。使い魔のほうに謝れ。実際あの子は気にしてない。そういうタイプじゃないからな。ただ、あの子を守る使い魔たちは、あの子を軽んじるような言動に敏感だ。言っていいことと悪いことがわかんねーなら黙っとけ。それで解決だ」
「……アイツだって、口が悪い。なのに、言い返すなって言うのか?」
「そうだ。セオもフェルムもお前に腹を立てても耐えさせてる。お前も、腹を立てても言い返すな」
「ッ!」
セオとフェルムに嫌われているのは知っている。
なんなら、面と向かって言われたこともある。
二人は今でこそ有能という評価だが当時は低評価だったので、何度もソーンが罵倒しつつフォローしたのだ。
『喧嘩をしてはいけない』というルールなので、ソーンが何か言っても二人は黙って席を外すだけだ。
『言い返さない』ということを『無視する』に置き換えて二人は耐えている。それもわかっている。
いろいろ思い返すと欠点だらけの自分に腹が立つ。そして、それでも見捨てないスミスに頭が上がらない。
「前に、『歳を取ったら改善しない』っつったけどな。でも、『容易には改善しない』ってだけで、いくつになっても反省したら改善すると信じてる。だけど、反省するかどうかは自分しだいだ」
「……はい」
スミスに諭され、ソーンは小さくうなずいた。




