第20話
次に、ボストンバッグを持ってきて、パーラとプールが詰めた調味料やら食材やらを出して確認を始めた。
醤油や味噌は樽であった。ケチャップとか中濃ソースとかウスターソースとかも作ったみたい。塩麹まであったんですけど。前世の記憶、なかったよね? なんで作り方を知ってるんだ。
乾物もたくさんある。海の幸の乾物が多かった。どこから持ってきたんだろう……。
茸もたくさんあったな。ちゃんとトリセツラベルが貼ってあるのが私らしい。こういうところ、私ってマメだよね。
一番ありがたいのが麺類。パスタがあったよ! うどんも蕎麦も、中華麺も! 麺を打とうかと思ったんだけど、膨張剤入りの粉しか売ってないので厳しかった。麺もないのかな。パンしかないはずなんてないはずなので、リストに入れておく。
「あっ、すっげ、米があるんですけど」
コレは私とパーラとプールの分ね。他の人の分はタラシさんに仕入れてもらおう。
……タラシさんに頼むものが多すぎるけど、手に入ったらホントお願いします。
「チーズも、自家製しかないか……」
錬金で作ったらしい熟成チーズがある。あの大きなケーキ型のが。使いかけのカットされたチーズもあるしおろし金も入ってた。きっとコレをパーラとプールの目の前でおろしたんだろうなあ。
「あ、中華包丁が入ってる。牛刀もだ。……私、ホントに前世の記憶がなかったのかな?」
絶対にコレ、記憶があって作ったんじゃないかな!?
それともこの世界にもこういう包丁があるのかな!?
これらは、毎回使うときに使うものを取りだして使い、またしまうようにしなくては。
勝手に使われて空にされると、私はともかくパーラとプールが激怒する。マジで殺しかねないので、めんどくさいけどしかたがないのよ。
「えーと、ほしいもの追加。麺、米、海の幸、茸、チーズ……じゃわからないか、ミルクの加工食品、と……」
うん。頑張ってねタラシさん!
申し訳なくなってきたので、ご褒美頑張ります!
私が食材研究をしている最中、オタクさんとインテリさんがやってきてオーブンについて質問する。
思いついたまま話すと、オタクさんは考え込みながら、インテリさんはブツブツ言いながら引き返していく。
ゴメンね二人とも。あと、パスタマシーンも作ってほしいです。できればミンサーも。
……と、研究していたらもう夕方になってしまった。
日が経つのが早い!
タラシさんが厨房に飛び込んできた。
「粉について、仕入れる当たりがついたぞサーシイ! 他にもいくつか種類があるから、全種類を仕入れてみることにした!」
「わぁ! ありがとうございます!」
やったー!
「あと、追加分です。必須とまではいかないけど、わりと切実にほしいです」
リストとサンプルを渡すとタラシさんが固まった。
「よろしくお願いします! ご褒美作りますから!」
「わ、わかった。……ちょっと時間をくれかいか? あと情報も」
「はーい!」
「……リーダーより人使いが荒い……」
とかタラシさんがぼやいている気がしたけど、きっと気のせいだね!
――と、くるりとタラシさんが振り向く。
「サーシイって、料理屋を開いていたんだっけ?」
「え? ……たぶん? 夢じゃなければ」
前世の記憶が夢だったりするオチもあるのよね。
タラシさんが苦笑する。
「これって、そうとう本格的な料理だろ。この町の料理屋じゃ、こんなに材料は揃えないよ」
「え……」
嘘でしょ?
って顔をしたらしく、タラシさんが笑う。
「サーシイには当たり前なのか。……明日リーダーに、この町について詳しく聞くといいよ。俺も、今日は買い出し優先で全然案内できてなかったから、次は解説するね」
そう言ってタラシさんは去っていった。
他の料理屋さんの料理が、すごく気になる……!
作り置きとして、ピーマン(ぽい野菜)の煮浸しや、蕪(ではないかもしれない根菜)の浅漬け、セロリのナムル、あとはお浸しやらポテサラっぽいのやらを作った。
「肉味噌も作りたいけどひき肉がない……」
ミンサーがほしい! 入れてないってことはないんだよ。
「プール、記憶のあった私って、細かくした肉の料理だって作ってたでしょ? どうやって肉を細かくしてたの?」
プールが目を開ける。
そしてシンクに飛び乗ると、伸びをした。
「なーん」
肉を出せと言っている。
なんとなく嫌な予感はするけれど、肉を出したよ。ちょっとだけにしておいた。
……と!
やはりというか、プールがシャキーン!と爪を伸ばし、シャシャシャシャッと粉砕した!
「なーんなーん」
褒めて褒めてって言ってる。
たぶん、記憶にない私がいつもやらせていたのだろうね。手慣れている感じがする。
「爪を洗ったほうがよかったかな……」
衛生的にどうなんだ。炒めるからオッケーとかいう感じか?
「なーん!」
あ、プールが抗議したよ。これは魔力の爪なので衛生的なんだと言っています。
というか私、プールの話がわかるのね。使い魔だからかな。
「そっかー。じゃあこれで肉味噌炒めを作ろうっと」
「なぁ~ん」
ソレ大好物、ってプールが鳴いて私にすりよった。




