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錬金失敗で幼女になった元魔女、弱小クランで胃袋を掴むことにしました  作者: サエトミユウ


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第17話

 ふくらむ魔法の粉を使ってパンを焼いてみたいけど、そういえばオーブンがない。言えば作ってもらえるのかな。ただ、温度設定がよくわからないな。温度計ってこの世界にあるの? でも、パンがあるんだからオーブンもあるはずなんだけど……。

 誰か知ってるかな。

 インテリさんは知識人だから知ってるかも。

「インテリさん、パンを焼くときってどんな設備を使ってるか知ってます?」

 インテリさんが目をパチパチと瞬きさせた。

「発音が正しくないね、サーシイ。私のラストネームはヒムテリーだ。それはともかく、質問に答えよう。パン屋は、専用の魔導具に入れて焼いているはずだ。……もしかして、専用の魔導具があれば君はパンも焼けるのか?」

「専用の魔導具があったらちゃんとしたパンを焼けますね。専用の魔導具がなくても焼けますけど」

 鍋焼きパンとかあったもん。アウトドア系で。

「マーロウがいない! 今こそ調達してくるべきでしょ!」

「いや、フェルムが作れるだろう! 設計なら私もできる!」

 美人さんとインテリ……じゃなくてヒムテリーさんが何やら騒いでいる。

「あ、もう一つ質問があります! この世界って、温度を計る魔導具はありますか? その場合の基準は?」

 インテリさんがこちらを見る。

「もちろん、温度を計る魔導具はある。基準は、水が固まる温度を0とし、水が沸く温度を百としている」

 摂氏だ! 助かった!

「じゃあ、その焼く魔導具に、一定の温度になるような調整機能もつけてほしいです! なんなら、余熱……えーと、その温度になるように温める機能、そして、タイマーもつけてほしい! 途中で温度を下げたり上げたりするから、それもかな。そこまでじゃなくても、庫内温度は知りたいのでそれがチェックできる温度計をつけてほしいです!」

 ベラベラしゃべると、インテリさんが面食らう。

「ちょ、ちょっと待て。言わんとしていることはわかるが、私は技術屋ではない。フェルムを呼んでくる」

 慌てたインテリさんが走っていった。

 よーし! オーブンが手に入りそうだぞー。


 あると便利なオーブン。

 お肉の塊なんかも焼けるから、大きいのを作ってほしいなー。厨房は広くてまだスペースがあるから2個あるといいな。パンとかお菓子を焼く用と、お肉とかを焼く用と。

 前世は厨房のが惣菜用でプライベートに小さな電気オープンを買ってそれでお菓子を焼いたりしていた。

 ……って考えてたら、扉の開け閉めの音と、バタバタ走ってくる音が聞こえてきたよ。

 オタクさんが飛び込んできた。

「セオから聞いたけど! すごいの思いつくよな!」

「パンを焼くのには、一定の温度がいいんですよ。それがあればお菓子も作れるかも。……それと、スペースがあるからもう一つ、お肉の塊とかも焼いてみたいのでそういうのがほしいです」

「「お肉の塊」」

 オタクさんと、追いついたインテリさんが声を揃えて復唱した。

 パーラとプールが喜んでいる。

「やったー! ご主人様のお肉の塊焼き! ひさしぶりですよー!」

「なーん、なーん」

 パーラが旋回している。プールもある意味旋回している。私の足もとに体をこすりつけているわ。

「そのためにはオーブン……じゃなくて、専用の魔導具が必要なのよ。詳しい要望をインテリ……じゃなくてヒムテリーさんとオタクさんに伝えて作ってもらうから、二人に頼んで」

 パーラとプールが意気込んでいる。

「よろしくお願いしますよ! ご主人様のお肉の塊焼きは、どれもおいしいんですー! ご褒美をご主人様に頼んでおきますから!」

「なーん!」

 ご褒美って……。

 お菓子とか作らないとダメかもしれない。

 粉の特徴を早く掴んでおくか……もういっそ、手持ちの粉を使おうかな。なんかいろいろ種類があったし。

「任せてくれたまえ!」

「任せろ!」

 二人が胸を叩いた。


 お昼は、鶏っぽいお肉を照り焼きにした。あとはサラダとパンとなんかわかんない根菜のポタージュ。

 今回、タマネギっぽい野菜を買ってもらったのでドレッシングは玉ドレにしたよ!

 トレーに乗っけて各自配膳してもらった。


「もう、ずっとリーダーがソーンの付き添い役でいいんじゃない?」

 と、食事中に美人さんが唐突に言った。

 ……あ、仲間はずれの付き添い役ね。

「でも、リーダーがサーシイちゃんを連れてきたからねえ……。うちらだったらスルーしたでしょう?」

 とは、女装さん。

「あらお生憎様。私はサーシイみたいなかわいい女の子が騙されていたら必ず連れて帰って手ずから面倒をみたわ。見捨てるのは私とリーダー以外でしょ」

「ちょっと待った。それなら俺も見捨てないかな。年齢的には守備範囲外だけど、逆にだからこそ連れて帰るよ」

 と、美人さんとタラシさんが口々に反論する。

「え? サルヴィアはともかくアンタは反対しないの?」

「こんな小さい子が『石頭』に騙されてたら連れて帰るよ。クランに入れるかはリーダーの判断だから俺にはどうしようもないけど、さすがに非人道的だろ。希望を聞いて、できるだけ沿う形の場所に連れていくとかするって」

 ってタラシさんが言う。

 え、私、あのままだったらどうなってたの!? 怖いんだけど!


「……私、やっぱりスミスさんにはご飯を作ろうかな……」

 拾ってくれた恩は、けっこうな恩かもしれないと思った。


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