第12話
食べていたら、慌てたようにスミスさんが起きてきた。
「悪い! 寝過ごした!」
「おはようございます」
別に寝過ごしてもいいけど。約束してないし。
「……もしかして、ここを片づけてくれたのか?」
食べながらうなずくと、スミスさんが眉を下げた。
「悪いな……。ふだんはここで飲み食いしねーんだ。皆、外に食べに出てる。昨日は初めてここで飲み食いして、盛り上がっちまったんだ。ごめんな」
食べていたパーラが顔を上げる。
「ごめんな、じゃないですよ! ご主人様に何をやらしてるんですか! ご主人様はメイドじゃないんですよ!? それに、勝手に作ったものを食べて! どういうつもりですか!」
「シャアアアアッ!」
プールも抗議している……というか威嚇している。
「わ、悪かった。ホンットーに悪かった。お詫びに、必要なものは全部買ってやるから」
「買えないものだってあるんですよ! ご主人様の持ってる調味料は、売ってないんですからね! 気安く食べてますけど、尽きたら終わりですよ!? ご主人様、記憶を失ってて作り方を覚えてないんですから!」
スミスさんが驚いている。
「マジで? でも料理は作れるじゃん」
「それとこれとは別なんです。……たぶん私、錬金の知識があったみたいなんですけど、その記憶を失ってるので……」
作り方がわからないのよ。
スミスさんが愕然として私を見た。
「マジかよ。……だから錬金を教えてくれ、っつってんのか」
うなずいた。
スミスさんが考え込む。
「……そうなると、サルヴィアのほうがいいな。サルヴィアは、錬金術で薬を作ってる。調味料はわかんねーけど、似たようなもんだろ。基礎はセオが教えるッつってたから、基礎を教わったらサルヴィアに実技を習え」
「わかりましたー」
返事をしたら、スミスさんがパンケーキを見ながらうらやましそうに尋ねてきた。
「パン、全部食っちまって悪かったな。それはどこで買ってきた?」
パンケーキを指す。
「作りました」
そう言ったら目を見開くスミスさん。
スミスさんが何か言う前に、パーラが釘を刺す。
「あっ、またご主人様の持ち物を奪おうとしてるでしょ! パンがないからご主人様自らが調合した粉で作ったんですからね!」
スミスさんが慌てる。
「悪い、そういうことか」
「買ってきなさい!」
「シャアアアアア!」
パーラとプールが吠えたて、スミスさんが飛び出していった。
飛び出していったスミスさんを目で追いながら、
「思えば、パンと味噌汁って合わなかったかな」
と呟いたら、
「なら、飲まなければいいんです!」
と、パーラが言い切った。
それもそうか。
さて、食事を続行と思ったら、女装さんがきた。
「おはよう、サーシイちゃん」
「おはようございます」
「いいのを食べてるわね」
催促されたら、何か言う前にパーラがキレた。
「何をしれっと催促してるんです!? ここを片付けたのはご主人様ですよ!? おまけに、ご主人様が作っておいた料理を許可なく食べ尽くして! どういうつもりですか! ご主人様から搾取するつもりなら、ここにいるのは断固反対です!」
ものすごい剣幕だ。
プールも唸っている。
「グルルルルル……」
女装さんが慌てている。
「ご、ごめんなさい。てっきりマーロウかスミスが片づけたと思ったのよ。マーロウは綺麗好きだし、スミスは口うるさいから。でも、いつもは皆で片づけるのよ?」
「散らかってたでしょーが!」
「ごめんなさい!」
女装さん、平謝り。
そこに、さらに現れたのが心と見た目が少年の人。
「朝っぱらから何を騒いでるんだよ……」
「騒ぎもしますよ! ご主人様が作ったものを勝手に食べた挙げ句、散らかしたまま寝て! ご主人様が片づけたんですよ!?」
「ハァ? それくらいで怒鳴ってんのかよ」
「ジャアアアア!」
プールの毛が逆立ちまくり、すごいことになった。
しかも、なんかちょっとおっきくなってない?
「貴様ら……我らのご主人様を、下僕扱いするつもりか?」
パーラも一回りくらい大きくなってきたし。
女装さんが慌てている。
「ちょっ、ソーン! 謝りなさいよ! 怒って怒鳴って当たり前でしょ!」
「なんでだよ。大したことでもねーだろ。新入りなんだからやって当然だ」
「ソーン! いい加減になさいよ! 喧嘩になるわよ!」
「……チッ。わかったよ。悪かった」
この人、地雷を踏みまくる人だなあ。地雷さんだ。
「ホラ、パーラとプール。謝ってるから許してあげなよ」
「ご冗談を! ご主人様を下僕扱いした奴を許す我らではありません!」
「グルルルルル」
地雷さんも、ふたりが本気で怒ってるのがわかってきたみたいでばつが悪そうな顔になった。
「ご主人様! コヤツには二度と料理を作らないでください! 不愉快です!」
「シャーッ!」
ふたりが訴える。
「う、うん。わかったよ」
よく知らない地雷さんより、私の使い魔がだいじ。
「ちょ――」
「口を開くな下郎!」
「ジャアアアア!」
何か言いかけた地雷さんを、ふたりが威嚇した。




