第11話
おはようございます。朝ですよ。
起きたら鞄が一つ増えてました。いいけど。
ブラシを手に取り、古ぼけた姿見があったので全身を映しながら髪を梳かす。
私の髪色は霞色とでも言うのかな。ちょっと赤みのあるグレー。地味色だけどけっこう気に入ってる。見た感じ同じ髪色の人はいないし。
というか、この世界の人の髪色って派手で驚いた。
金髪が、マジでド金髪。黄色と言っても過言じゃない。原色の髪の色なんて、染めてる人しか見たことがなかったよ。
「よし、こんなもんかな」
ブラシをしまうと、いつの間にか帰ってきて寝ているパーラとプールを見た。
ふたりともまだ寝ている。
夜更かししたのでしょう。戦果を確認しよう。
鞄を開けたらノートがたくさん入っていた。
ひとつ手に取ってパラパラとめくる。
「……わからん」
ヤバいわよ。
いつのノートか知らないけど、書いた本人がわからないことが書いてある。
『マンドラゴラの断末魔の結晶を分離し、赤い液体を……』
って! 断末魔って叫びじゃないの? 隠語?
ノートを閉じた。
「よし、意味がわかるまでは封印」
パソコン……せめてスマホやタブレットがあればねー。管理アプリでタグをつけて記録して、用語はリンクを貼る、とかできるのに。
前世の記憶が残っていたらパソコンを錬金したのにねーと思いつつ着替えて、階下に降りる。
「えっ」
食堂がすごいことになってた!
酒瓶が散乱してるし、なぜか食器も散乱している。
昨日買ったパンもない。あの後食べちゃったみたい。
困惑しつつ厨房に行ったら……。
「あ! オタクさんがやってくれた!」
シンクの高さが下がってる!
それだけじゃなくて、食器棚とか他の棚とかも下がってる!
「すごーい!」
使いやすい! オタクさん、プロだ!
どうやったんだろう。まさか全部作り替えたってわけじゃないだろうけど……。
食堂に散乱していた食器と酒瓶を片づける。
酒瓶はどう扱うのかわからないので、とりあえず全部洗っておいた。
……と、パーラとプールが起きたみたいで、いつの間にかそばに寄ってきたよ。
「ご主人様、おはようございます」
「なーん」
「おはよう。昨日はありがとう。ノートを持ってきてくれたんだね。それで、読んだけど……うん、わからなかった」
パーラとプールが面食らっている。
「にゃっ?」
「えっ? ご自身で書いたんでしょ?」
「ご自身で書いたのは、記憶があるときだから。自分のメモに自分がわかることは書かないのよ。なので、何もかもわからなくなったら書いてあることがわからない」
「えー……」
「なぁん……」
パーラとプールが口を開けてこちらを見ているわ。
「たぶんだけど、もうちょっといろいろと知識がついて、その上で最初から読んでいったら理解するのかもしれない」
「そうですね! きっといつかわかりますよ! 調合したものはまだたくさんあったので当分は大丈夫です」
とか言ってます。醤油好きの鴉かあ。
「そうそう! 昨日作ったのはもう食べられますよね!?」
と、キラキラした目で問いかけてきた。
「あ、うん。一晩置いたから、味がシミシミだと思うよ。夕飯にしたかったけど、そんなに食べたいならちょっと出そうか」
言いながら貯蔵庫を開けた。
空だった。
「…………? 入ってない」
「えっ!?」
「にゃっ!?」
ふたりが驚き、貯蔵庫を覗いた。
「な、ない……」
「もしかして、昨日酒盛りしていたみたいだから食べちゃったのかな?」
そう呟いたら、パーラとプールが愕然とした。
「……あ、アヤツら……我の食事を……」
「グルルルル……」
ふたりが不穏だよ。
「まあまあ。また作ればいいじゃない。しばらくは料理をたくさん作りたい気分だから、いろいろ作ろう。昨日の話だと、料理のお金はクランで出してくれるみたいだから、それでたくさん作ろうよ」
「ご主人様は優しすぎます! 甘やかすとつけあがりますよ連中は!」
パーラがとんでもないこと言ってるわあ。
それにしても。
「パンがないのかあ。どうしようかな」
誰も起きてこないし酒盛りしてたのなら朝食はいらないっぽいかな。
となると、私とパーラとプールの分だけか。
スープくらいは用意していたら、飲むかもしれない。
濃いめの味噌汁を作り、それとは別に朝食を作る。
「パンケーキ! ……は、ふたりが食べられないか」
「食べられますよ失礼な! あ、でもご主人様は小さいのを作ってくれてました!」
そうなんだ?
さらに、パーラが付け加える。
「そういえば、特別な粉を作っていたような? あ、持ってきてますよ!」
「粉!?」
そうか、そういえばパンケーキだと卵とか膨張剤とか必要か。そういうのも作ったのかなあ。
……とか考えながら取りだしたのが。
「パンケーキミックス!」
もっとすごかったわ。まんまだわ。
醤油ベースの和風ドレッシングを作り、野菜を細かく切って食べやすいサラダにする。
干し肉ってのも買ってもらったので、これにちょっと醤油を塗ってカリカリに焼く。ここまでがパンケーキの付け合わせ。
さて、メインのパンケーキにはパンケーキミックスを使う。私の予想なら、水で溶けばいいはず。
水で溶いて、小さいのをいくつも焼いた。
焼き上がったパンケーキにバターっぽい何かを乗せる。この、トローッと溶けていく感じがいいよね!
「メープルシロップっぽい何かを私は使ってなかった?」
「なんかかけてました!」
って、名前を言ってほしかったがパーラは覚えてないっぽい。
調味料を出していったら、
「たぶんコレ?」
黄金色のドロッとしたのが出てきた。
「そうそう、それです! 樹液を集めて煮詰めてましたー」
「うん、そうそう」
匂いを嗅いだら、メープルではないけど近い感じの匂いがするので、コレだと確信し、かける。
「よーしできたー」
「やったー!」
「なーん!」
せっかくなので、ソファまで全員分運んで、座って食べた。
「おおー。ご主人様の料理の味がするー」
「なーん!」
ふたりが喜んでくれている。
私も食べた。
「……おお。さすが、こだわりの粉」
フワフワモチモチ食感だ。
甘じょっぱいし、ミルクのような香りもするし、バターのような香りもする。
和風ドレッシングも成功したみたいだし、ベーコン代わりの干し肉もカリカリでおいしい!




