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⋯なんだ、簡単なことじゃないか。
祖父母には、感謝の印として旅行のプレゼントをした。旅行に出る前、2人に睡眠剤を混ぜたお茶を勧めて⋯。
⋯慣れぬ車を運転し、嬉々として出掛けた祖父母は、そのまま還らぬ人となった。
父に半ば無理やり連れてこられた九州旅行。
そこで出会った、1人の無垢な少女。
「はじめまして、花菜ちゃん」
ああ、僕が求めていた、僕の人生を完璧なものにする、最後のピース!
この子こそ、僕の『運命の人』!
この運命を僕のモノにするために、
⋯余計なものは排除しないと⋯。
その機会はすぐに訪れた。
「正さん⋯ですよね?」
偶然を装い、F市を訪れていた正に声をかけた。
「気分転換で、一人旅をしているんです。両親には内緒ですよ」
最寄りのコーヒーショップに寄り、コーヒーを1杯買った。⋯その中にも睡眠剤を混ぜる。
「ここのショップのこのコーヒーは絶品なんです。眠気覚ましに車で飲まれて下さい」
自宅に車を運転して帰宅するという正に、何食わぬ顔で僕はコーヒーを渡した。
「ありがとう、尚久くん⋯」
⋯
⋯
⋯
⋯僕は、僕自身を完璧なものにするために『運命の人』を手に入れるはずだったんだ。
⋯これは何だ?
「花菜!花菜!しっかりしろ!」
聞こえてきたのは、排除するはずだった男の叫び声と⋯その男に支えられ、ぐったりとした花菜。
真っ赤に染まったナイフと僕の身体⋯
ヌルリと生温かい⋯花菜の血液!
「⋯あ、あぁー!」
⋯僕は『僕の運命』を、この手で⋯殺してしまった!




