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「久おじさん、あかりさん、尚久くん。話があるの」
「なぜ君がここにいるんだっ!?」
私の隣には周がいる。周の意思の強さが、今の私を支えてくれている。尚久くんは周を見ると激昂した。
「尚久、話を聞こうじゃないか」
そんな尚久くんを、おじさんはなだめて、話を聞いてくれた。激昂した尚久くんを見て、あかりさんはただ怯えていた。
「僕は、中村周と言います。大工をしていて、花菜さんが通う高校の夜間部の4年生です。花菜さんとお付き合いをさせて頂いています。花菜さんが卒業したら、結婚を許して頂きたい」
周は迷いなく、はっきりと久おじさんに言った。
「何を言ってるんだ!花菜は僕のフィアンセだ!」
「尚久!黙りなさい」
尚久くんが叫んだが、久おじさんが制止する。
「花菜はどう思ってるんだ?」
久おじさんは私を見て、優しく私に聞いた。
「久おじさん、私は尚久くんと結婚できません。彼と一緒に生きていきます」
私は思いを伝えた。尚久の握りしめた手が小刻みに震えているのが見えた。
「⋯そうか、分かった。ただし、高校卒業してすぐに結婚は駄目だ⋯大学には行きなさい」
おじさんは溜息をつくと、優しくそう応えた。
「おじさん、ありがとう」
思いもかけず、おじさんが味方になってくれたことで、私と周はホッとした。周との将来がはじめて現実として見えてきた。
「⋯駄目だ、許さない、許さないよ⋯」
周を送るため、リビングを出ようとした時、ナイフを握りしめた尚久くんの姿が見えた。尚久くんはそのまま周に向かって走り出す。私はとっさに周を庇い、背中に強烈な熱さを感じた。
「花菜!」
霞む意識の中、周に名前を呼ばれ、抱きとめられた。




