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生徒会室の扉がノックされる。
「⋯はい、どうぞ」
「花菜⋯」
「⋯周!?どうして?」
扉が開くと、そこには周が立っていた。
「女の子が、お前がここにいるって教えてくれた、早く行けって」
⋯玲ちゃんだ。玲ちゃんが教えてくれたんだ。周に会えた喜びを感じたが、すぐに現実に立ち返り、周に冷たく言い放つ。
「⋯もう会わないほうが良いよ。今までありがとう。楽しかった」
笑顔を無理やり作り、周に言う。周は迷うことなく私に近づき、そっと頬を撫でる。
「⋯お前のそれは、もう癖だな。へたな笑い方⋯」
「⋯だって、笑い方⋯忘れちゃった⋯」
うつむいて呟く私を、周は抱きしめた。周の暖かさと汗の匂い⋯私はせきを切ったように涙が溢れ出す。
「お前が幸せなら、心から笑えるなら⋯お前に婚約者がいても⋯」
周の腕はさらに私を強く抱きしめる。
「⋯好きだ、花菜⋯好きだ⋯」
「⋯周、好き、大好き⋯」
2人で強く抱きしめ合う。
なんて幸せなんだろう⋯。この瞬間、恐ろしい現実を忘れられた。
「⋯俺と一緒にいて欲しい、お前と生きていきたい」
「周⋯!」
「贅沢はさせてやれないけど⋯お前を守るよ」
「何言ってるの!私が周を守る!私が周を幸せにする!」
私は周を見上げて、特上の笑顔で叫んだ。周はとびきりの笑顔で私に応えてくれた。




