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その男は、中庭のベンチにコーヒーの缶を2本持って座っていた。息を切らし、声をかける。
「⋯あんたじゃなきゃ、ダメみたい」
私は男を睨みつける。
「⋯⋯花菜さんは、生徒会室にいるわ⋯早く行きなさいよ!」
男は一瞬、驚いたような顔を見せた。直後、持っていたコーヒーを1缶投げ、私はそれを受け取った。
「ありがとう」
男は一言言うと、笑顔を見せて走り去った。
「コーヒーなんて嫌いよ⋯」
受け取ったコーヒーを見つめ呟いた。
「⋯玲」
男が去った中庭のベンチに力なく座っていると、拓海が隣に座り声をかけてきた。
「何よ、花菜さんが心配で生徒会室に来たんでしょ?花菜さんに声かければ良かったじゃない、何で私の所に来てるのよ」
こんな時でさえ憎まれ口を叩いてしまう。
「玲が泣いてるような気がして⋯」
「泣いてなんかないわよ!」
「泣いてんじゃん」
拓海はそっと自分のハンカチを差し出す。私もハンカチは持ってたけど、差し出されたハンカチを受け取った。
「⋯ごめん、玲の気持ちに気づかなくて」
「何であんたが謝んのよ」
溢れ出る涙をハンカチで押さえる。
「あんただって、失恋決定よ」
「⋯ああ、同士だな」
拓海は顔をくしゃくしゃにしていた。
⋯やっぱり、拓海は眩い⋯
「⋯正反対なのに、大嫌いなはずなのに、あんたのこと、嫌いになれないのよね⋯」
拓海をそっと抱き寄せて、私は呟いた。




