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花菜の様子が明らかにおかしい。先週はソワソワしてて、それでもなんとなく嬉しそうな雰囲気を醸し出していた。でも、今日は⋯
「花菜、どうかしたのか?」
俺は花菜に問いかける。
「何でもないよ」
花菜はハッとして俺に作り物の笑顔で答える。時々感じることのあった、花菜の笑顔。
「何でも無いことなんてないだろ、そんな顔して」
「たっくんには関係ない!⋯ごめん、先に行くね」
花菜はハッとして言葉をのみ込み、俺の前から立ち去った。花菜に拒絶の言葉を言われたのは初めてで、俺はただ呆然と立ち尽くした。
夜学の男と花菜さんが一緒にいる所を見て、あんな男に花菜さんを取られたくないと思った。今まで見たことのない、幸せそうな花菜さんの笑顔を引き出したであろうあの男。だから、大嫌いな尚久に花菜さんを売った。それなのに、花菜さんのあの笑顔が頭から離れない。
「花菜さん、私から離れて行かないで⋯お願い⋯」
土曜日は花菜さんに会いたくなくて学校を休んだ。
月曜日、足取り重く学校に向かう。少し前に花菜さんと拓海が見えた。声をかけるのを躊躇してしまう。
「たっくんには関係ない!」
花菜さんから初めて聞く、拓海に対する拒絶の言葉。今にも泣き出しそうな花菜さんの顔を見て、私の心は歓喜と後悔が入り混じり、その自分の感情に目眩を覚えた。
先週休んでいた玲が、今日は学校に来ている。
「玲。ちょっと良いか?」
「なによ、私忙しいんだけど」
休み時間に玲に話しかけ、人けのない場所に誘う。
「なんだか、花菜、おかしくないか?」
玲に問いかける。
「おかしいって?」
「いつもと違う気がする、うまく言えないけど」
「そりゃ花菜さんだって色々あるでしょ。いつもノーテンキなあんたとは違うし」
玲はイラつき気味に俺に言った。いつもの俺に対しての態度とは微妙に違う。
「⋯なんか、お前もなんかあった?」
「何にも無いわよ!」
言い捨てて、玲は俺の前から立ち去った。




