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第93話:夜明け前の星
帰路の夜は静かだった。
山の稜線は闇に沈み、焚き火の炎だけが仲間たちの顔を淡く照らしている。炎の揺らぎに合わせ、影が地面を伸び縮みし、まるでこの地に眠る長い歴史が囁いているかのようだった。
遠くの空には、雲ひとつない闇が広がり、そこに無数の星が瞬いていた。
その中でひときわ明るい一等星が、北方の空で静かに光を放っている。
アリシアがその星を指差し、かすかな笑みを浮かべた。
「……あれは、昔からこの地を見守ってきた星。嵐の夜でも、必ずそこにある」
オレはその言葉を胸に刻む。
炎龍との戦いも、天地創造の奇跡も、すべては過ぎ去った瞬間に過ぎない。だが、この空の下で過ごす限り、その記憶と誓いは決して消えることはない。
仲間たちは、焚き火の周囲で肩を寄せ合い、それぞれ静かに目を閉じていた。
疲れを癒す眠りの中にも、きっと新たな旅路の気配が息づいている。
——夜明けは、もうすぐだ。
オレは星々の瞬きを見上げながら、まだ見ぬ次の物語を心の中で描き始めていた。
闇の向こうから差し込む一筋の光が、この世界の新たな幕開けを告げる日が、必ず来ると信じて。




