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第92話:辺境への帰還
新たに生まれた平原を背に、オレたちは歩き出した。
かつては切り立った崖と氷壁に阻まれていた中央高地の心臓部——今は緩やかな丘と小川が交差する穏やかな大地へと変貌している。
振り返れば、その中心にそびえていた火山は、もはや峻烈な峰ではなく、低く削がれた裾野を広げ、陽光を受けて金色に輝いていた。
イーサンが肩越しにちらりとその姿を見やり、「信じられねえ……」と呟く。
リオナは両手で薬草袋を抱き締め、まだ目を丸くしたままだ。
トマスとファルクは無言で歩き続けながらも、何度も振り返っては、その変わり果てた景色を瞼に焼き付けようとしていた。
足元には、天地創造の直後に湧き出した水が、細い流れを作って延びている。
それはやがて新しい命を育む川となるのだろう。オレはその水音を背中で聞きながら、歩を進めた。
帰還の道は、行きよりも遥かに容易だった。
だが容易であることが、すぐに安堵にはつながらない。
炎龍との戦い、そしてこの世界に刻んだ変革の痕跡——それらが静かに胸の中で重みを増していく。
やがて、視界の先に辺境の山並みが姿を現した。
そこは、オレたちが出発した場所であり、これから再び立つ舞台だ。
その山影を見据え、オレは歩みを止めない。
——還るべき場所がある。
だが、そこはもう以前と同じ場所ではない。




