表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
91/135

第89話:新しい地平

 白い息を吐きながら、一行は足元の雪を踏みしめ、ゆっくりとその場に集まった。

 たった今まで炎龍の影に覆われ、死と隣り合わせだった火山の周囲は、もう別の世界だった。

 切り立った断崖も、凍てついた急斜面も消え去り、そこには地平線まで続く平原が黄金色の光を帯びて広がっている。


 夕陽がその新しい大地を染め上げ、雪解け水が小さな流れを作りながら輝きを放つ。

 遠くに残された周縁の山々が、あたかも巨大な城壁のように外縁を囲み、その内側は人の手が触れたことのない純白のキャンバスのように広がっていた。


 「……これが……」

 最初に声を漏らしたのはイーサンだった。斥候の目が、未知の地形を前にして子供のような驚きに染まっている。

 リオナは両手で薬草袋を抱きしめたまま、しばし言葉を失い、やがて小さく笑った。

 トマスとファルクは互いに顔を見合わせ、長く息を吐く。それは安堵であり、同時に未来への予感でもあった。


 アリシアはまだ主人公の傍らに立っていた。額に汗が滲み、呼吸は乱れているが、その瞳はこの変化を自分の全存在で刻みつけるかのように平原を見つめている。

 主人公は彼女の肩越しに視線を投げた。

 「お前が作ったんだ、この地は」

 その言葉に、アリシアはほんの一瞬だけ笑みを見せたが、すぐに真剣な表情へと戻った。


 「……いいえ。あなたと、みんなと一緒に作ったんです」

 その声は、雪原の静けさの中で凛と響いた。


 風が平原を渡って頬を撫でる。冷たさの中に、どこか柔らかな温もりを感じるのは、そこに生命が芽吹く未来を予感しているからかもしれない。

 誰もがその瞬間、自分たちが何か取り返しのつかないものを壊したのではなく、確かな何かを生み出したのだと理解していた。


 主人公はゆっくりと深呼吸し、視線を遠くの稜線へ送った。

 ——この新しい地平が、次の物語の始まりだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ