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第87話:共鳴する覚悟

 元の主を失った中央高地の心臓部——そこには、今なお黒く裂けた岩肌を抱く巨大な火山が、冷たい空を突き破るようにそびえていた。

 周囲の山々は果てしなく連なり、雪と氷に覆われた峰々が幾重にも重なって、見る者に言葉を失わせる威容を放っている。その中心に鎮座する火山は、まるで世界そのものの根幹であるかのような重さを纏っていた。


 風は鋭く頬を打ち、吐く息は瞬く間に凍りつく。それでも主人公とアリシアは、その頂を見上げる視線を外さなかった。

 「……あれを変えるのね」

 アリシアの言葉は、寒気をも切り裂くほど静かで澄んでいた。


 主人公はゆっくりと頷き、ラグナの装甲を展開する。前腕の魔力供給口が開き、そこから放たれる光粒が風に舞い、冷たい空に淡い輝きを散らす。

 「全力で支える。お前の魔法を、限界まで解き放て」


 アリシアは一歩踏み出し、主人公の手をそっと握った。瞬間、二人の間に柔らかな光が走り、互いの魔力が混じり合う。冷え切った空気が温み、胸の奥の鼓動が重なっていく。

 「……感じる。あなたの力が、私の中に流れ込んでいる」

 その囁きは、耳ではなく魂に直接届くようだった。


 魔力の流れは加速し、境界が溶けていく。二人の意識がひとつの器に収まり、そこに満ちていく膨大な力は、肉体の感覚を超えた、精神そのものを触れ合わせるような深い共鳴を生み出していた。


 やがてアリシアは主人公の手を放し、風の中で細めた瞳を火山の頂へと向けた。

 「——行くわ」

 その短い言葉の奥に宿る決意の重さを、主人公は全身で受け止めていた。

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