第84話:変わらぬ意志
歩みを進めるたびに、全身の奥から疲労がにじみ出てくる。
炎龍との戦いで放出した魔力の余韻は、まだ筋肉の芯まで染み込んでいて、時折、全身を重くする。だが、不思議とその重さは嫌な感覚ではなかった。——あの戦いを越えた証のように思えたからだ。
灰に覆われた大地を見渡す。ここには、奪われた命や失われた家がある。だが同時に、この地はまだ息をしている。微かな風の中に、焦げ跡に混じって土の匂いが蘇っているのを感じた。
(……まだ終わっていない)
炎龍討伐は、確かに大きな一歩だった。しかし、それはあくまでも一つの節目にすぎない。この大陸には、まだ数え切れないほどの危機と、歪んだ現実が残っている。
そして——この世界を形作ったのは、他ならぬオレ自身だ。
ならば、その責任をどう果たすかは、オレが決めなければならない。
「……まだやれる」
無意識に口からこぼれたその言葉に、アリシアが横で小さく微笑んだ。
「その顔、次の戦いのことを考えてますね」
オレは視線を前に向けたまま、短く頷く。
「考えざるを得ない」
遠く、朝陽が昇り始めていた。薄い雲を透かして射す光が、灰色の大地をわずかに照らす。
その光景を見つめながら、オレは心の中で静かに誓う。
炎龍の爪痕に覆われたこの地を、そして、この世界を——もう一度、息を吹き返させると。




