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第6話:試作ゲームの初陣

 土曜の朝、会場の照明がまだ半分しか灯っていないうちに、オレたちはブースの設営を始めていた。

 会場は都心の貸しホール、壁沿いに並ぶ簡易テーブルに、小規模なゲーム開発者たちが思い思いのポスターや機材を広げていく。

 空気は、展示会特有の熱と緊張で早くも少し重たかった。


 「よし、このロゴ位置で固定するぞ」

 中原がポスターの端を押さえ、三谷が養生テープを貼る。

 島崎は展示用のモニターをチェックし、北条はテーブルに置くパンフの束を整えていた。

 美咲は来場者用の試遊コントローラーをケーブルで繋ぎながら、「コードが見えない方が見栄えいいよ」と指示を飛ばす。


 オレはノートPCを立ち上げ、「零号機」のデモビルドを起動する。

 立ち上がった画面に、会場の照明が反射して淡く光った。

 (動作は問題なし……のはずだ)

 「コウくん、本番に弱いタイプですか?」

 ポケットの中から、アバロスがからかうように囁く。

 (うるさい。黙って見てろ)


 開場のアナウンスが響き、人の波がゆっくりと流れ込んでくる。

 最初の一人がオレたちのブースに立ち止まり、画面を覗き込む。

 コントローラーを手に取り、キャラクターを動かし始めた瞬間、その表情がわずかに変わった。

 「……おもしろいな、これ」

 その一言に、胸の奥がじんと熱くなる。


 やがて、二人、三人と立ち寄る人が増え、ブースの前には小さな列ができた。

 笑い声、驚きの声、質問の嵐。

 パンフは午前中のうちに半分以上なくなった。


 だが同時に、負荷がかかる場面で一瞬動作が重くなる現象も確認された。

 「……これは後でチェックだな」

 中原が小声でメモを取り、島崎が首をかしげる。

 成功の手応えと、改善すべき課題が同時にオレの胸に刻まれていった。


 展示会が終わる頃、全員の顔は疲れていたが、どこか晴れやかだった。

 「次はもっとすごいの、作ろうな」

 誰が言い出すでもなく、その言葉が自然に出ていた。

 その瞬間、オレは改めて、この仲間とならどこまででも行ける気がした。

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