第7話:徹夜のビルド
展示会から数日後、オレたちは「零号機」の正式ビルド作成に取りかかっていた。
外はすでに深夜、雑居ビルの廊下は静まり返り、蛍光灯の白い光がフロアの隅まで冷たく照らしている。
窓の外には、都心のビル群がまばらに灯を落とし、遠くで救急車のサイレンが微かに響いていた。
「また動作が固まったな……」
中原が眉をひそめ、デバッグコンソールを覗き込む。
「敵AIのスクリプトがループに入ってるかも」
三谷が即座にコードを開き、修正を始める。
美咲はUIレイアウトの最終調整を進めつつ、「もうちょっと色味を落とした方が見やすい」とデザイン案を切り替える。
北条は背景描画の軽量化を試み、島崎はサウンドのミキシングに没頭していた。
オレは全員の進捗を見ながら、自分もイベントシーンの動作確認に入る。
マップ切り替え時に一瞬ブラックアウトする挙動が気になった。
(原因は……)
「コウくん、ロード処理の非同期化を検討してください」
ポケットのアバロスが静かに提案する。
(それだ)
即座に処理を組み替え、試すとブラックアウトがほぼ解消された。
午前2時、全員の目の下にはうっすらとクマができていた。
しかし、誰一人として「帰ろう」とは言わなかった。
新しいビルドが完成するたび、モニターに映し出される映像に小さな歓声が上がる。
「……これなら行ける」
中原の一言に、全員が黙ってうなずいた。
時計の針が4時を回る頃、ようやく安定ビルドが完成した。
外の空はまだ暗く、東の空にわずかな群青色が差し始めている。
コーヒーの紙カップを手に、オレはぼんやりとその色を見つめた。
徹夜の疲労よりも、仲間たちと作り上げた達成感の方が勝っていた。




