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第77話:意識の闇へ
音が遠ざかる。
さっきまで耳を裂くように吹き荒れていた熱風も、仲間たちの叫びも、まるで厚い水底に沈んでいくようにぼやけていく。
視界の端で、炎龍の骸がゆっくりと冷え、夜の闇に溶けていった。
ラグナの装甲は、外見こそ傷一つない。
だが、内部で繋がっている魔力伝導路は限界まで焼き切れ、身体と意識を支える柱が一気に崩れ落ちていく感覚があった。
(……これ以上は……保てない)
ふと、頬に柔らかい感触が触れた。
アリシアの手だ。
「あなた、目を閉じないで……!」
切実な声が、かすかな灯のように意識の底で揺れる。それはほのかに懐かしさをオレに感じさせたが、それ以上考える余力はもうない。
瞼が重すぎた。
オレは最後に仲間たちの顔を見渡そうとしたが、視界はもう暗く塗りつぶされていく。
イーサンの険しい表情、リオナの涙に濡れた瞳、トマスとファルクの焦燥——すべてが、離れていく。
(炎龍は……倒した。あとは……頼む)
意識が沈みゆく最中、不思議と恐怖はなかった。
ただ、胸の奥に小さく残ったのは、この世界でまだやり残したことがあるという、確かな感覚だけだった。
やがて、その感覚すら闇に溶け、全てが途絶えた。




