第75話:渾身の一撃
炎龍の胸骨下部——魔力中枢を包むわずかな装甲の継ぎ目が、目前に迫る。
ラグナのHUDは限界運転を示す赤いラインを突き抜け、魔力ゲージが急速に減っていく。
全身を覆う防護膜は、もはや薄氷のような脆さしか残っていない。
(ここだ……!)
オレは両腕の魔力回路を解放し、全出力を一点へと収束させる。
ラグナの右腕ユニットが蒼白い光を帯び、その輝きは瞬く間に槍の穂先のように鋭く凝縮された。
推進機構の轟音が耳を震わせ、全身を前へと押し出す。
炎龍の咆哮が空間を震わせた瞬間、オレはその装甲の継ぎ目へ渾身の突撃を叩き込む。
光の刃が装甲を裂き、奥の魔力中枢へ到達する感触が伝わった。
激しい衝撃と同時に、炎龍の巨体が硬直し、目の奥で魔力の火が揺らぐ。
「——ッ!」
全身を駆け抜ける魔力の逆流。
ラグナの防護膜が悲鳴をあげ、膝が折れそうになるのを意地でこらえる。
視界の端でHUDが「魔力残量:0%」を示し、外界の音が遠ざかっていく。
炎龍の胸部から閃光が爆ぜ、轟音が大地を揺らした。
巨体が崩れ落ち、熱と煙が押し寄せる中、オレはその場に片膝をつく。
(……やった、のか……?)
安堵が胸を満たすと同時に、全身の力が抜けていく。
ラグナの装甲が音もなく解除され、冷たい夜気が素肌に触れた。
最後に見えたのは、倒れ伏す炎龍の影と、その先に立つ仲間たちの遠い輪郭だった。




