第72話:焼ける大地
炎龍の翼が一閃するたび、熱風が荒野を削り、地面の砂礫が空へ巻き上がった。
爪が地を薙ぎ払うと、大地そのものがえぐられ、そこから灼熱の蒸気が噴き出す。
足元に広がるひび割れは、まるで炎龍がこの地を支配する境界線を刻むようだった。
ラグナの防護膜に、立て続けに熱波と破片が叩きつけられる。
HUDのゲージがみるみる減り、魔力残量と照らし合わせる計算式が脳裏に走る。
——このままでは、防御に全てを費やして攻めの手がなくなる。
「クソ……ここまでやるか」
炎龍は攻撃のたびに戦場を変える。
数秒前まであった岩壁が消え、逆に足場となる高台が隆起していた。
それはまるで、生きた迷宮の中で戦っているような感覚だった。
背後からアリシアの声が飛ぶ。
「地形を利用して! 奴は自分の炎で、逃げ道を潰してる!」
その言葉に視線を走らせると、確かに炎龍が作った火壁が包囲の形を成しつつある。
(奴はこの熱と地形変化で、確実に追い詰めるつもりだ)
足元のひび割れが崩れ、灼熱の亀裂が目の前に広がった。
ラグナの脚部補助スラスターを瞬時に起動し、炎龍の真正面を外れる形で飛び移る。
背後で地面が落ち、溶岩のような赤い輝きが噴き上がった。
——この大地そのものが、炎龍の武器だ。
呼吸を整える暇もなく、次の一撃が来る。
それを迎え撃つため、オレはラグナの防護出力を一段階引き上げた。




