第70話:影のような一撃
炎龍の咆哮が大地を震わせた。
巨大な影が頭上を覆い、太陽の光が遮断される。
(……来る)
翼の一閃。空気が爆ぜ、岩壁が抉れる。
その一撃は風ではなく、質量を持った刃そのものだった。
ラグナの防護フィールドが自動的に展開し、瞬時に衝撃を受け止める。
光の膜が激しく揺らぎ、魔力ゲージが一気に三割削られた。
——ただのかすり傷で、これだけ持っていかれるのか。
炎龍は攻撃の間隔を空けない。翼の連撃から尾の横薙ぎへと繋ぎ、その動きは視認すら困難だった。
尾が薙ぎ払った瞬間、地面の石が粉砕され、無数の破片が弾丸のように飛び散る。
オレは地を蹴り、わずかな隙間を縫って炎龍の足元へ滑り込む。
視界の端で、ラグナのHUDが閃光を放ち、〈危険〉の警告が連続で点滅する。
——次の一撃は直撃する。
その予感が脊髄を走った瞬間、炎龍の鉤爪が真上から振り下ろされる。
その軌道は、まるで影が落ちるように速く、避ける間すら与えなかった。
(……間に合え!)
オレはラグナの左腕シールドを前に突き出し、魔力を最大充填する。
直後、鋼鉄を叩き割るような衝撃が全身を貫き、視界が白く弾けた。
ラグナの防護フィールドが爆ぜ、衝撃波が周囲の瓦礫を吹き飛ばす。
警告音が鳴り響く。〈防護フィールド残存率 42%〉。
——このままじゃ、二撃目は耐えられない。
オレは息を吐き、炎龍の動きを睨み返した。
まだ終わっていない。次の瞬間こそが、反撃の始まりだ。




