第69話:一手先を読む
炎龍の首筋がわずかに揺れ、黄金の瞳がオレを捕捉する。
——来る。
次の瞬間、喉奥で魔力が収束し、赤熱した光が漏れた。吐息が空気を灼き、地面がひび割れる。
ラグナの防護シールドが自動展開し、魔力を吸い込みながら全身を包み込む。
高温の風圧が叩きつけられるたび、魔力ゲージがじりじりと減少していく。
(あと二回、直撃を受ければ防御は限界……)
だが炎龍の攻撃は正面だけではない。翼の一撃は巨大な刃のように岩盤を削り、尾の一振りは城門をも粉砕する。
普通なら回避に全力を割くべき局面——しかし、オレの目的は回避ではない。
〈次の炎吐発動まで、残り三秒〉
「……十分だ」
オレはラグナの右腕ユニットを構え、剣型の魔装ブレードを展開。
その刃先は蒼白く輝き、周囲の熱を飲み込むように冷えた光を帯びていく。
炎龍が大きく息を吸い込む——その瞬間、オレは敢えて真正面に躍り出た。
狙いはただ一つ、炎龍の動きを先読みして、第三鱗板の継ぎ目へ突き込むこと。
炎が奔る。だが、オレは半歩早く横へ滑り込み、炎龍の死角に潜り込んだ。
その動きは、かつて戦術シミュレーションで何度も描いた“理想の回避ルート”そのままだった。
〈弱点部位、射程圏内〉
(……次は仕留める)
オレは呼吸を整え、刃を握る手にさらに魔力を送り込む。
この一手先を読む動きこそが、炎龍討伐の糸口になる——そう確信していた。




