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第63話:地を割る熱風

 咆哮が収まるより早く、崖下から衝撃波が突き上げた。

 大地が爆ぜ、岩盤の割れ目から灼熱のガスが噴き出す。谷全体が赤く光り、地表に走る亀裂は溶鉱炉のように輝いていた。


 オレは即座にラグナの脚部を強化モードに切り替え、魔力の噴射で後方へ跳躍する。直後、先ほどまで立っていた場所を炎の奔流が呑み込み、石が一瞬で白く焼け、形を失っていく。


 「……やはり、桁外れだ」

 炎龍はその巨体を揺らし、翼を広げることなく頭部だけを持ち上げた。喉奥の紅蓮が脈打ち、次の吐息が放たれる前兆を見せる。


 ラグナのセンサーが警告音を鳴らし、熱量の急上昇を示す赤いラインが視界を埋めた。

 (正面からは持たない——)


 オレは魔力を腕部装甲に集中し、即席の防御フィールドを展開する。透明な半球が瞬時に形を成し、迫る熱風を受け止めた。

 だが、衝撃は予想以上だった。防御面を押し潰すような圧力に脚がめり込み、地面が悲鳴を上げる。


 「クッ——!」

 魔力計が一気に黄色域に達し、視界の端で警告が点滅する。


 炎龍の吐息が止むと同時に、防御フィールドを解除し、オレは側面へ滑り込むように移動した。

 足元の岩が崩れ、谷の底が見える。溶け落ちた石の間からは、さらに深い赤の光が脈動していた。


 (あれが、この地を焼き尽くした源……)

 ラグナの内部で冷却システムが唸り、再び戦闘データが更新される。


 炎龍の金色の瞳が、こちらの動きを確実に捉えていた。

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