第54話:仲間を集める
炎龍の脅威を取り除くためには、オレひとりの力では到底足りない。神授の力を行使すれば確かに討伐は可能かもしれない――だが、それはこの地に住む人々の未来を築くことには繋がらない。討伐の意味を、この地の人間が共有し、自らの力で成し遂げなければならないのだ。
「……人を集めるのは、容易じゃないぞ」
長の館の一室で、ハイラムが腕を組んだまま低く言った。
「炎龍の討伐は何度も試みられたが、どれも失敗に終わっている。あれに挑むのは死地に足を踏み入れるようなものだ」
アリシアは傍らで静かに頷きながらも、どこか遠くを見ているようだった。
「それでも、やらなければ何も変わらない。……この土地は、もう限界です」
オレは深く息を吸い、二人を見た。
「だからこそ、仲間を集める。恐怖を飲み込んででも、この地に残りたいと願う者を」
まず訪れたのは、辺境の市場だった。かつては交易で賑わった場所も、今は露店がまばらに並び、土埃が舞うだけの寂れた通りになっている。
炎龍の噂を口にすると、商人たちは顔をしかめ、視線を逸らす。中には「命が惜しければやめろ」と吐き捨てる者もいた。
それでも、少しずつ耳を傾けてくれる者が現れた。
家族を炎龍に奪われた男、名誉回復を狙う元北方防衛軍の兵士、そして報酬を目当てにする傭兵。目的は違えど、彼らの瞳には同じ色があった――この現状を変えたいという色だ。
ハイラムの古い戦友も加わった。流民の中からも数人が志願した。彼らは訓練を受けた兵士ではないが、飢えと寒さを生き延びてきたしぶとさを持っている。
アリシアは彼らひとりひとりに声をかけ、必要な物資や役割を確認していく。その姿は、荒廃した辺境に咲く一輪の花のようだった。
オレは、その様子を見ながら心の中で呟く。
――これはゲームじゃない。誰かのシナリオでもない。オレたちの選択で作る物語だ。
こうして、炎龍討伐隊の骨格が少しずつ形を成していった。
人数は多くはない。だが、彼らの目には確かに覚悟の光が宿っていた。




