第52話:揺るがぬ意志
炎龍の存在が、この土地の貧しさの根を張る――その事実が胸に沈殿してから、何日かが過ぎた。
村人たちの生活は、表面上は静かだが、どこか常に緊張している。
空を見上げるその目は、晴れていてもどこか怯えている。
ガルド・ハイラムは、村の広場で集会を開いていた。
「今年も北の山は赤く光っていた。炎龍が再び目を覚ましている証だ」
ざわめく人々の声が広場を満たす。
誰もが分かっている。
あれを放置すれば、次に焼かれるのは自分たちの番かもしれないと。
だが――この土地にそれを討つ力はない。
王都から援軍が来ることもない。
各国は己の利権にしがみつき、辺境のことなど見向きもしない。
(このままじゃ、何も変わらない)
オレは静かに、だが確かな意思を固めていた。
神授で与えられた力を、このために使うべきかもしれない――そう思う自分がいる。
だが同時に、安易に“チート”で解決することへの抵抗感も拭えなかった。
元のゲームでは、炎龍討伐は中盤以降、充分に戦力を整えてから挑むべき大規模イベントだった。
それを、今、この時点でやるのは、設計者であるオレの手でシナリオをひっくり返すことになる。
それでも、やらなければならない理由がある。
「……炎龍を討つ」
自分でも驚くほどはっきりと口から出た。
ハイラムがゆっくりとこちらを振り向き、その眼光が鋭くなる。
「……本気か」
「ああ。本気だ」
言葉にした瞬間、その響きが自分の中で反響し、揺るがぬ意志として定着していくのを感じた。
この世界で、自分だけの道を切り開くために。
そして、炎龍の影に縛られたこの土地に、ほんのわずかでも光を差し込むために。




