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第48話:光の中の彼女

 重い扉が、きしむ音を立てて開いた。

 外から流れ込んできたのは、冷たく乾いた風……のはずだった。だが、その風の中に混じって、かすかな温もりと、甘やかな香りが漂ってくる。


 「入れ」

 ハイラムが促す。


 足を踏み入れた先――そこは簡素な作りの部屋だった。壁は粗い石積み、窓は細く切られ、外光をわずかに通す程度。しかし、その一角だけは不自然なほど柔らかい光に包まれていた。


 光の中心に、ひとりの女性がいた。

 薄布を重ねた淡い緑の衣が、彼女の動きに合わせて静かに揺れる。髪は雪解け水のように澄んだ銀色で、肩口から胸元へと流れ落ち、光を反射して淡く輝いていた。


 オレは思わず足を止める。

 荒廃した辺境の空気の中で、この女性だけが別世界のように澄んで見えた。


 「……彼女が、アリシアだ」

 ハイラムの声が低く響く。


 アリシアは静かにこちらへ視線を向けた。瞳は深い湖のような青で、見つめられるだけで胸の奥が揺らぐような感覚が走る。

 その瞳の奥には、不思議なものがあった――痛みと、強さと、そしてまだ消えていない炎。


 「遠路はるばる、ようこそ」

 その声は澄み渡る鐘の音のようで、荒れ果てた壁や冷たい石床までも柔らかく包み込むようだった。


 オレは一瞬、言葉を失った。

 ただの美しさではない。

 この荒れ果てた地で、それでも立ち続け、誰かを支え、光であろうとする強さ――それが、彼女の存在そのものからにじみ出ていた。


 「あなたには、見せたいものがたくさんあります」

 そう言って微笑むアリシアの姿は、まるで長い闇を抜けた先に見える、最初の朝日のようだった。


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