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第33話:魔法師の地位

 ムナリス王国において、魔法師は古くから特別な地位を占めてきた。

 王直属の魔法師団から地方の街の守護術士まで、その立場は幅広いが、総じて社会的信用は高く、貴族や豪商たちからも一目置かれている。

 その理由は単純だ。この国において魔法は戦力であり、同時に富を生み出す手段だからだ。


 戦争を行う余力はない――だが、魔法の存在は国力を測る指標のひとつであり、隣国との外交にも直結する。魔法師団の人数や実績は、まるで金貨の量のように扱われ、各都市は競うように優秀な魔法師を確保しようとする。

 中でも、王都ミューレインの大魔法院は、国内すべての魔法師にとって頂点であり、同時に入口でもある。


 この世界では魔法師こそが決戦兵器そのものだった。現実世界における航空戦力の重要性に近いと言えば良いだろうか。魔法師でなければ魔法師を迎撃するのは難しい。甲鉄艦や要塞砲は存在するが、それも魔法師の上空護衛が不可欠だ。圧倒的に高速移動が可能な魔法師による攻撃には耐えられない。それは航空戦力を欠いた陸上戦力や海上戦力が無力なのとまったく同じなのだ。


 しかも魔法師次第だが、広域に対して魔法攻撃をかけられる可能性もある。こうした魔法師は国家の浮沈に関わる重要な存在となる。元の身分がどうであれ、尊重され昇進も思うがままとなるのだ。


 ゲーム『ラグナ』におけるプレイヤーの初期定石は、この大魔法院の入学試験を受け、若き才能として頭角を現すことだ。試験を突破すれば、王国各地から集まる研修任務や依頼をこなし、名声を積み重ね、最終的には王直属の席を狙える――そんな「黄金ルート」が、過去のプレイヤーの間で共有されてきた。

 このルートを歩めば、序盤から多くのNPCやクエストに恵まれ、物語をスムーズに進められるのは間違いない。


 ……だが、オレには、その道があまりに「用意されすぎたレール」に見えた。

 王国のために戦う気もないし、魔法師団の制服を着て毎日命令を待つ生活にも興味はない。オレがやりたいのは、名声を積むことじゃない。この世界で、自分だけの物語を紡ぐことだ。


 それは、かつて机の上で設計図を描いていた時の感覚に近い。既に作られたレベルデザインの中をなぞるより、まだ誰も見たことのないルートを切り拓く方が、よほど息ができる。


 大魔法院の高い塔が、王都の遠景の中で夕日に染まっていた。

 塔を目指す多くの新米魔法師たちの姿が、王都の大通りを行き交っている。彼らは皆、定石の階段を上るために歩いているのだろう。

 その流れを横目に、オレは別の路地へと足を向けた。

 ――最初から決まったシナリオに乗るつもりはない。

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