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剣聖少女 〜あてもない旅がしたいと願った少女の冒険譚、剣聖にもなれたので箒に乗って路銀稼ぎや旅を楽しみたいと思います〜  作者: 両天海道
11章 旅路

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737話 重なり合った現象の中で仲間の絆を深めあう


 見たことのない景色が広がっていた。

 視界の先には、知らない空と、知らない大地。私は今、故郷から遠く離れた場所に立っている。あてもない旅という無謀な夢を胸に抱えたまま。

 丘の上で見る広大な自然を前に、私は思わず感傷に浸っていた。


「随分と草原だな。見渡す限りどこまでも続いている」


 一口コーヒーを飲みながら、朝の優雅なブレイクタイムを楽しんでいるフェクト。その後ろで、眠たそうな顔をしながらも、しっかりご飯を食べるナズナ。

 そんないつもの風景が私の心をどこまでも軽くしてくれた。

 大きく深呼吸をすれば、新鮮な空気が体を循環していくのがわかる。そうして今日も始まるのだ、あてもない旅の続きが。


「ねぇ、ちょっと思ってたのと違うんだけど!」


 吹き荒れる風、鋭い槍のような雨が結界に降り注ぐ。朝は、どこまでも綺麗な青空が広がっていたはずなのに、今は見る影もなく、まるで先ほどの光景は全て夢模様である。

 ほっぺをつねったら痛いのに、それでもそう思いたくなるほどに私は現実逃避をしてしまう。現実逃避をしたくなるほどに、天気は大荒れであり私の心をどんどん蝕んでいこうとする。


「アリアが現実逃避してるニャー、そのせいでほうきが不安定になってる、アリア戻ってきて!」

「ナズナ、しっかり掴まっておけよ! 一気に魔力を流すから共鳴し合うまで暴れるかもしれないから」


 微かに聞こえてくる二人の声。ここで私がこんなふうになってしまうのはダメ。その瞬間、私はようやくこの現実を受け止めたのだ。

 だが、それとは裏腹にほうきに流れ込むフェクトの魔力。立て直しを図るために増やした私の魔力がぶつかり合い、手から伝わってくる感触が『これはダメだ』と、訴えかけてくる。

 互いの魔力がぶつかり合い、ほうきの内部で魔力の爆発が起きる。

 そのせいでほうきは制御を失い、暴れ始める。ナズナはほうきから落ちて、結界内に強く体をぶつけた。

 私もまた、ほうきが暴れた影響で体のあちこちを結界にぶつけ、一部ヒビが入った。


「結界から落ちないように私たちを閉じ込めたのね」

「急に現実逃避なんてするなよな、なんとか共鳴して暴走は止まったけど、とりあえず一度どこかに避難しよう」


 そうして、ほうきの高度を下げつつ私たちは地面にたどり着く。まるで根を張るかのように結界を張り、雨風を凌ぐ。


「それにしてもほんとうに、嘘みたいな天気になったよな。こんな雨になるなんて思いもしなかった」

「ほんとうにそうだよ、ここまで強い雨が今後も続くならこれ以上進むのは止めておいた方がいいかもね」


 風も雨も自分たちには関係ないといわんばかりに、気配がうねり動いている。そんな気配を感じて、思わずため息が出る。


「二人とも、こっちに魔物が向かってきている。結構大変かもしれないけど、一気に倒すわよ」


 パリン……そんな音が結界内に響いた。凄まじい風と雨が割れた箇所から入ってくる。どれだけ荒れているかを象徴するかのような自然の力。

 そんな力を私たちは肌で感じる。


「たかが、風と雨で俺の結界が破られたって言うのか? そんなバカな話があるわけないだろ、どこから攻撃が飛んで来た」


 明らかに動揺するフェクト。結界の修復が遅れ、一度割れた結界は簡単に脆くなる。フェクトの心が砕け落ちるかのように、結界は機能しなくなりそのまま消えた。

 凄まじい風と雨が視界を狭くする。気配感知もあやふやになりかけるほどの妨害があり、魔物の気配を感じられない。


「フェクトが使えない以上、ここで戦えるのは私とナズナだけだよ。気を抜いたらダメだからね」


 雨の音が強まっていくのがわかる。その中を颯爽と豪快に掻き分けて進む音がする。その音を頼りに、腰に下げてあった剣を抜き、私は剣を振るう。

 筋肉質の肉を斬り裂き魔物を葬る。最期の言葉を伝えるために消滅を果たすその時まで、魔物の遠吠えが周囲に響き渡った。


「ナズナ、衝撃に備えて!」


 そんな言葉を言った瞬間、一斉に攻め出すウルフ。少しでも対処に遅れていたら、今ごろ地面に叩きつけられていただろう。


「覚醒を果たしたわたしに勝てるなら挑んで来なさい」


 タゲをナズナに集中させたことが功を奏したのかもしれない。一斉にナズナの方へ向かい、それをナズナは最も容易く対処していく。

 圧倒的な力――同等な力がなければどうすることも出来ないような武器を振りかざすナズナ。


「あとは頼んだ!」


 私は走り出し、フェクトの方へ戻る。フェクトはまだ自分の結界が破壊されたことが信じられないのか、呆然とその場で座り込んでいる。


「フェクト、こんなところで何をやっているの! 結界が壊されたぐらいでなんだって言うの、魔法使いなら新たな結界を作り出しなさい。もっと、もっと頑丈な結界を私に見せてみなさいよ」


 胸ぐらを掴んでいた手を離し、地面に放り出す。フェクトは動こうとはしない。

 フェクトだってわかっているはずだ。あの結界は、色々な機能をつけたことが原因である。だが、色々な機能がついていなければ、私やナズナは地面に落ちていた可能性があった。


「フェクト、イデリアを超えて私の隣に立つのならこんなところでクヨクヨしないで! これは剣聖としてではなく、主人としての命令よ。それが守れないのなら、今すぐ私の前から姿を消して」


 私はフェクトに剣を突き立てた。

 フェクトは一瞬驚いた顔をするが、すぐさま納得した顔ですっきりとしている。


「アリア、すまなかった。ほんとうにすまなかった。俺自身、魔法に関してまだまだ未熟だと理解してる、だからこそ、これからは俺が作る結界を壊していってくれないか? 最も強い魔法使いとして、アリアの隣に立てられるように」

「わたしのことも忘れないでニャー、アリアの両隣は絶対にわたしたちなんだってことを見せつけようよ」


 そうして、晴れ間が戻ってくる。さっきまでの天気がまるで嘘だった、そんな感じに晴れている。まるで、私たちのこれからを祝福するかのようである。

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