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剣聖少女 〜あてもない旅がしたいと願った少女の冒険譚、剣聖にもなれたので箒に乗って路銀稼ぎや旅を楽しみたいと思います〜  作者: 両天海道
11章 旅路

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738話 見つめる先に何を見る


 今日も一日が終わる。オレンジ色に染まる空はどこか儚く、昼夜が混じり合う瞬間。そんな瞬間を私たちは、今日もほうきに乗ってあてもない旅をしながら見つめる。そうしてそろそろ野営の準備をし始めるのであった。


「今日も何事もなく、ずっと飛んでたなぁ」


 晩御飯の準備をしながらしみじみ言うフェクト。そんな雰囲気に釣られるかのように、私もナズナも「そうだね」と、返事をする。

 そんな雰囲気に飲まれてしまい、私たちは準備をしている最中だというのに、気がつけばエールを飲んでいる始末である。

 喉を通って駆け巡るエール。それがとてつもなく美味しい。旅の疲労が一気に飛んでいくかのような感覚は何度も味わったとしても全然飽きない。

 むしろ、また浴びたいとさえ思うほどにこの瞬間が堪らない。


「アリア、顔がとろけてるぞ」

「そういうフェクトだって、顔が緩みきってるけど」

「みんな緩みきってるニャー」


 その通りである。そんな指摘に対して、私たちは顔を見合わせ笑ってしまう。そんな時間がずっと続けばいいとさえ思っているのに、そんなことは簡単に叶うものではないからこそ、夢の一つとして認識してしまう。

 奥の茂みから殺気を感じる。それに二人も気が付いているようで、エールを飲みながらも意識はそちらに傾いていた。

 気配を探れば、複数の魔物が私たちの結界を観察しているのがわかる。こちらを睨みつけ、殺気を感じさせる魔物、ぐるぐると回りながらも、いつ飛び出してもいいように警戒心を感じさせるもの、ただひたすらに観察する感じだった。

 他にもいるかもしれないが、周囲で感じる気配はこの三体だけである。


「襲ってこないね、この結界が破れないから出てくるように仕向けようとしているのかな」

「そんなものに引っかかると思っているのかニャー? でも、ずっとあの鋭い眼光で睨みつけられるのも、リラックスしようにも、警戒は続けないと思って体は休まらないよね」

「でもさ、ここで俺たちが出てもいつもの感じで面白くはないよね、向こうから仕掛けてくるなりアクションがあれば、どんな風にでも対処しようと思えば出来るんだけどな」


 フェクトの魔力が動いているのがわかる。何か仕掛けようとしているのは明白であり、その顔はまるで実験が大好きな男子である。

 どんな風の変化があるのかな、どんな感じになるのかな、どんな結果になるのかと、鼻歌混じりで結界をアレンジしている姿はほんとうに子どものようだ。

 そんな気配を感じさせながらも、魔物たちはこれ以上アクションを動かすつもりはない。ただ、こちらが出てくるのをひたすらに待っている。そんな挑戦状を叩きつけられている気分だ。


「とりあえずご飯の続きでもしようかな。ここで私たちが無駄に時間を過ごすのは間違っていると思うしさ」


 二人もそれに納得したのか、エールを飲むのを止め、それぞれ動き始めた。そうして料理が出来て、私たちはその料理を食らう。

 フェクトが作る豪快な男メシという料理は、私やナズナの胃袋をがっちりと掴んでいる。そんな料理を食べていても、魔物の気配は消えない。

 それどころか、気配の数が増えているのがわかる。


「ここで動かない三体を心配したのか、それとも数を増やして私たちが結界から出てくるのを待っているのか、どっちなんだろうね」

「圧倒的に後者だろ、どう考えてもそっちの方だ。それにこの程度でこいつらが諦めないこと、アリアはわかっているんだろ?」

「当たり前じゃん。だってそれに、この程度で諦めるのならウルフとしてのプライドなんてあってないようなものだと私は思うけどね」


 その後、私たちはいつもよりもエールを飲んでおり、気が付けばみんな机を枕にして眠ってしまっていた。ぼんやりとした表情で周りを見ると、大量の魔物がこちらをジッと見つめている。

 とんでもない集中力だと思った。私たちが寝ている間、魔物たちは、いつでも戦闘に入れるよう準備を怠っていない。

 それどころか、その上仲間をより増やして私たちを襲うという明確な意思がある。そんな一途に見つめる魔物たちに私は敬意を払いたくなった。

 腰に下げてあった剣を抜く。一瞬にしてピリついた雰囲気と化すが、それでも関係はない。


「さぁ、私が相手になってあげるから、後悔が残らないようにするのよ」


 結界から出た瞬間、目の色を変え襲い掛かってくる魔物を私は斬り裂いた。魔物から見れば、何が起こったのかわからない。そんな剣技を私は放つ。

 血しぶきの雨が降る。そんな雨なんてまるで諸共せず、私は一歩、また一歩と歩みを進める。全力の威嚇で牽制しようとするが、効果なんてあるはずがない。


「私たちをずっと見ていたんだよね、さっさと攻めて来なさいよ」


 恐怖に満ちた目。そんな目で私を見つめながら突っ込んでくる魔物たち。そんな魔物を私は、あれよあれよと斬っていく。いつの間にか、数百体はいたであろう魔物たちはとっくに死んでいる、ただ一匹を除いて。


「君はずっと私たちのことをジッと観察していたウルフだね。今もなお動かないのは観察を続けているつもりかしら?」


 ウルフは何も答えない。

 そんなウルフを見て、私はニコリと笑うだけ。


「これ以上、構っていたくないの、だから殺すね」


 剣を握る手にも力が入る。深呼吸を一度して、攻めの姿勢へと変化させる。その時、ウルフもまた立ち上がり、うねり声をあげながら、こちらを鋭い眼光で見ている。

 

 勝負は一瞬であった。


 互いの一撃が掠り合い、互いにダメージを負った。

 服に血が滲んでいくのがわかる。痛みで顔を少しばかり歪みそうになりながらも、ウルフを貫いた剣を見て、私は勝利を確信するのであった。

 朧げな目でこちらを見つめるウルフ。最期に見せた表情は、苦しみでも悔しさでもなかった。戦えたことへの感謝を感じさせる笑顔だったのである。


「君は……こんな顔も私に見せてくれるんだね……一度の刃を交えた程度だけど、私も君と戦えてほんとうに楽しかったよ。また、戦おう」

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