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剣聖少女 〜あてもない旅がしたいと願った少女の冒険譚、剣聖にもなれたので箒に乗って路銀稼ぎや旅を楽しみたいと思います〜  作者: 両天海道
11章 旅路

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735話 死にゆくダンジョンと共に


 夏の暑さが本格化してくる頃、私たちは相も変わらずほうきに乗ってあてもない旅をしていた。

 暑さで額には汗が滲み出ており、何度も汗を拭う程度には今日もダイナールはとても暑い。自然豊かなダイナールの自然を見ながらほうきを進ませるが、暑さのせいかどんよりとした空気感があった。

 そんな時、額がほんの少しだけひんやりとしたものを感じる。それは、弱々しい風であったが、私の心はどことなく軽くなった感じがした。

 だが、二人は違うみたいで必死な顔をして暑さから耐え忍んでいるみたいであり、そんな風を感じる余裕なんて微塵も残っていないようだ。

 それも全て、フェクトが魔力消費を抑えるというのが全ての始まりであったが、自分から冷気を止めているのだから、再開すると言い出せない雰囲気のままほうきはひたすらに進んでいく。

 そんなフェクトを見かねて私は、助け舟を出すことにした。


「フェクト、そろそろ暑いんだけどさ、もう再開しても良くないかな?」


 フェクトは顔をこちらへ向けた。頬が赤く染め上がり、呼吸音もどこかおかしいぐらいには暑さに負けている様子である。

 そんなフェクトは、なんとか目を輝かせ力強く指を鳴らす。

 その瞬間、結界が作り出せると同時に冷たい冷気がじんわりと流れ始めていく。その冷たさは、私たちにとってそれは楽園にいるかのようなものであった。

 ナズナはパッと顔をあげ、振り返っている私の方を見て、目を輝かせている。


「アリアありがとうニャー、もうわたし耐えられない寸前だったからほんとうに助かったニャー」


 先ほどまでまるで生気すら感じられないほどに、気配が沈み込んでいたナズナが嘘のように明るい気配を感じさせる。

 ナズナは興奮が冷め切らないまま、私に抱きついてくるが、互いに熱が篭っていたままだったこともあり、すぐさま離れた。

 そうして、ようやく充分に冷気が行き渡っていき私たちは今後の予定について話を始めた。


「これからどうしようか、このまま真っ直ぐ進んでもいいんだけどさ、ちょっと道とは外れてるんだけど、ダンジョンがあるんだよね」


 ダンジョンという言葉に真っ先に食いついてきたのは、ナズナである。


「ダンジョン行きたい! せっかくこんな場所まで来てるんだから、絶対に行くべきニャー」


 ナズナの力強い言葉にフェクトは圧倒され、何も言えなくなってしまう。それほどまでの熱量で言われたら、たとえフェクトであってもそれに対して了承するしかないほどだ。

 それだけの熱量の持ったナズナは、とてもウキウキとした気分となり今にもほうきから飛び降りて走り出してしまいそうなほどである。


「ナズナ、勝手に飛び降りるのは危険だからやったらダメよ。それにまだ先にある場所だから、すぐに飛び降りたって意味ないよ」


 ナズナの動きがピタッと止まる。それはナズナにとって衝撃な事実であり、おとなしくほうきに深く座り込む。

 フェクトの方を見ると、マップの確認作業をしており、私が言っていたダンジョンをどうやら見つけたようだった。フェクトも情報を確認したが、あまりにも情報がないのか真っ白なページである。

 そんなダンジョンの情報を見ていたフェクトはこちらに目線を戻し、少しばかり不安そうな声で話しかけてきた。


「おい、これってほんとうに大丈夫なのか。あまりにも情報がない上に、今も存在しているか怪しさ満点じゃねぇか」

「やっぱりそこは気になるよね、でもさそこは実際に確かめてみないとだよね、行ってみるぐらいはいいと思うけど」

「わたしもアリアの意見に賛成ニャー、最近、ダンジョンはご無沙汰だったし、気軽に運動するにはもってこいな場所だし行ってみたい」


 フェクトは嫌な顔をするが、大きなため息をついて諦めたのかダンジョンに行くことで決まった。そうしてそこから数日後の昼頃、私たちは目指していたダンジョンのもとにようやく辿り着く。

 着く少し前から感じてはいたが、とてつもないほどに薄気味悪いダンジョンだと私たちは思ってしまった。それほどまでに歪なダンジョンであり、これでまだダンジョンとして保っているのだから、ほんとうにすごい光景である。


「俺は入るのに反対するぞ。いつ何が起こるかわからない中で、こんな中に入るのは危険だ。下手したら、ダンジョン内に閉じ込められる可能性だってある」

「転移で逃げ出すことは可能だと思うけど? 薄気味悪いけど、他のダンジョンとは何も変わらないとさえわたしは思うけどニャー」


 確かにフェクトの意見は正しい。このダンジョンは、今こうして私たちの前に現れている時点で奇跡の産物である。

 その証拠にこのダンジョンで唯一生存しているのは、ここのボスであり、こちらへゆっくりと向かってきている。そいつが出てきた時点でダンジョンとしての役割は終えることになるだろう。

 それはつまり、ダンジョンとして死を意味するものであり、ダンジョンとしての役割を降りようとしているようなものだった。


「二人ともよく聞いて、このダンジョンはもう長くない。その証拠に、最後のダンジョンモンスターがゆっくりと出てこようとしている」


 あの魔物は、私たちが現れたことによって動き出したわけではない。これは単なる偶然であり、出てきた魔物もおそらく、そう長くは保たないだろう。


「二人とも、出てきた魔物は初めての戦闘かもしれない。最初で最後の戦闘を私たちが相手をするわよ」


 そうして出てきたオーガはやはり死にかけであり、とてつもないほどに足取りが重い。私たちに気が付いてはいるが、まともに戦える状況ではない。

 それでも、魔物としての本能が死んでいないということが、こちらを見つめる目つきでわかる。まるで自分に鞭を打つかのように、咆哮を上げこちらへ向けて走り出してくる。

 そんな魔物を私たちは、最も容易く仕留めたのであった。三人が軽く触れただけで、オーガは苦しみ出しそのまま地面に崩れ落ちていく。

 それでもどこか、嬉しそうな表情をしている。

 その後、まるで諦めたかのようにそのままダンジョンと共に消滅を果たし、それこそが、長年支え合ったような関係性を象徴しているかのような終わり方であり、私たちはその光景を目に焼き付けて旅に戻るのであった。

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