729話 意外な人物
投稿が遅れてしまい申し訳ございませんでした。
倒れ込んだ美魔女は、なんとも無様な姿であり立ち上がれずにいた。
「もう終わりとか言わないよね? そんな簡単に倒れるなんて思ってなかったんだけど」
体はピクピクと痙攣するだけで、それ以上は動こうとはしない。それでも、気配は目を背けたくなるほどに凄まじく、まるで生命力の塊を相手にしているようなものだった。
試しに突いてみるが、特段変わった様子は見られずただずっとうつ伏せで倒れている。
そんな時だった。背後からフェクトの声が聞こえてきた。
「アリア、今すぐそいつをぶっ飛ばせ! そいつ、自然の魔力を吸ってるぞ!」
そんな言葉を聞いた瞬間、私はフェクトの指示通り木剣を振り上げる。だが、それは一歩遅かったのか、ガッチリと受け止められていた。
「なんていう力なの!? 私の一撃を止められるほどに回復したっていうわけ?」
先ほど感じていた気配の正体は、こういうことだったのだろう。だからこそ、目の前にいる美魔女は私の攻撃を受け止めている。
それだけの魔力を自然から吸い上げ、自身の力に変える。それは歴戦の魔法使いだからこそ完璧までに上手くいったということなのだろう。
自然の魔力と自身の魔力を寸分違わず同化させ適応させる。それがこの美魔女の真骨頂という感じであることは、確定的だった。
「フラワーボム」
棘のある花たちが一塊となって破裂する。その時見せた、美魔女の顔はとてつもないほどに悪い顔をしていたのが一瞬見えた。
「ぐぅっ! 痛いわね、しかもこの棘ってまさか……毒」
即効性の毒なのだろう。皮膚に突き刺さった瞬間、痛みと同時にめまい、吐き気、頭痛、腹痛、倦怠感が一気に症状として現れた。
すぐに立てなくなり、私はそのまま膝を付いてしまう。その直後、私は思いっきり吐いた。
「まだ完全に倒れないなんてすごいわね、普通ならとっくに死んでてもおかしくないんだけど」
「でしょうね……体全身が悲鳴を上げているのが嫌というほど聞こえてくるわよ」
まるで『だったら死になさい』と、言わんばかりに杖を振り上げ思いっきりフルスイングする。頬に激突して、そのまま私は何度か地面に叩きつけられながら、地面に倒れ込んだ。
その衝撃で、私は寝たまま嘔吐をしてしまうほどであり、体が本気で悲鳴を上げている。それでも、意識を失わないのは、剣聖としての意地が少なからずあるからであろう。
そんな中、立ち上がろうと力を入れるが力なんて入るわけもなく、ついには倒れてしまった。
「アリア! 意識を失えば何もかも終わるぞ、だから意識だけははっきり保て」
フェクトは死に物狂いで叫んでいた。自分も相当しんどい状況だという状況にもかかわらず、命を燃やしているかのように叫んでいる。
そんな言葉の数々が、私に力をくれるかのようになんとか意識を保とうとしているのが感覚でわかる。
「うっせんだよ、お前らのそんなイチャコラ見せられている私の身にでもなってみなさいよ! フラワーボム」
そんな時だった。
魔法は暴発を起こし、美魔女に降り注ぎ、一瞬にしてその場に倒れ込んだ。そんな状況に、私たちは驚くこと以外出来ない。
ハッと我に返り、後ろをなんとか振り返るとそこにいたのは見覚えのある姿である。
「な、なんであなたたちがこんな場所に……いるんですか!?」
「随分と派手に浴びたわね、まぁこれぐらいならなんとか出来るからじっとしておきな」
そう言うと彼女は回復魔法を発動させた。その回復力は凄まじいもので、先ほどまでの苦しみがまるで嘘のようだ。
ボロボロだったはずなのに、すぐに立ち上がることが出来るほどまでに回復を果たしている。
「ほんとうにどうしてこんなところに?」
「こやつが悪いことをしでかす気がしたからな、村を追放しても人様には迷惑をかけないように、こうして来ては懲らしめているんだよ。剣聖様には随分と迷惑をかけちまった」
彼女は、深々と頭を下げた。そうして、美魔女の方へ振り向き、苦しみ悶えているところをしばし眺めた後、杖で思いっきり顔面を殴りつけた。
私が斬り裂いてしまった杖をうまいこと使いこなしている。
「コイツに関しては、こちらで預かる。どうやらまだ懲りていないらしいからね。剣聖様もたまには杖をお使いになってね」
そうしてまるで嵐のように去っていくのであった。
「だからあんなに杖で殴るのが上手かったのか、そりゃあそこで暮らしている人なら杖を使った物理戦は上手いよね」
二人の体に巻きついた拘束具を斬り裂き、二人とも徐々に力を取り戻し始めた。ナズナはだいぶ弱っているが、命は別状はない。
フェクトも一人では歩けないほどには、力を持っていかれていたが、すぐさまポーションを飲み、劇的に回復を果たした。
「とりあえず今からは、少しだけでも休もうかな。さすがに私も精神的にも疲れちゃったから」
そうして目覚めたのは、それから数十分経った後のことである。まだ二人とも寝ており、すぐには起きることはないほどである。
とりあえず私は立ち上がり、体を伸ばす。全身が悲鳴を上げており、戦いの悲惨さを感じている。それほどまでに、あの戦いは私にとってめんどくさい相手だったのだろう。
「あのフラワーボムは思った以上にアホな魔法だった。あんな魔法をこれからも容認するのは無理そう。相手側の被害も大きそうだし」
そんなことを呟いているなんて思ってもおらず、気がついた時には、フェクトがこちらの方を見て、何やらニヤついていた。
「もしかして、私が独り言を喋っているところって見たよね」
フェクトは曇り一つない目で、力強く頷きを返してきた。
「フラワーボムについてか? あの魔法って本来ならもう少し柔らかい魔法なんだけどな。あの美魔女がカスタムしたやつだと思うぞ。あそこまで完璧に練り上げられているやつは見たことがない」
「やっぱりそうなんだ、あそこまで毒の棘があるからおかしいとは思ってたんだよね」
そんな魔法を使いこなせるほどに美魔女は魔法に精通していた。それがどうしてあんな風になってしまったのか、今の私たちにはわからない。




