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剣聖少女 〜あてもない旅がしたいと願った少女の冒険譚、剣聖にもなれたので箒に乗って路銀稼ぎや旅を楽しみたいと思います〜  作者: 両天海道
11章 旅路

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725話 雨の中で組み手


 春から夏へと入れ替わりを見せつつ季節の狭間。そんな日も相も変わらず、ほうきに乗ってあてもない旅をしていた。

 先ほどまで晴天と呼べるほどに晴れていたはずが、あっという間に曇りが出たと思えば空が暗くなり始める。そうして数分経たないうちに、雨がダイナールに降り始めた。

 結界に力強くぶつかる雨を突っ切るように、私たちのほうきは止まることはない。


「ゲリラ豪雨にしては、結構早いよね」


 喋ることもなかったが、なんとなく私はそんな言葉を口にした。


「そうだな、でもたまにはこうして雨が降るのもいいものだけどな。雨が降らなかったら作物は育たないからな」

「でも、そこは魔法で管理しているだろうからそんな心配はしなくてもいいと思うけどニャー」


 二人の声が聞こえてくる。互いにそれぞれの主張を言いつつも、二人とも話半分にそれを聞いているようだった。

 そんな時、私はあることを思い出していた。それは、こういう時に限って魔物と出会ったりするということだった。雨の中、私たちは何度も魔物たちと戦ってきている。だから今回も現れるのではないかと、警戒心を強めているが、全く気配は感じられなかった。


「魔物の気配がないことはいいことだけど、それにしてはここ最近、最後に戦ったのってあのモグラだよね」

「そうだな、数日前だったよな、あのモグラと戦ったのって」


 そんな話をしていたら、私たちは無性に組み手がしたくなってくる。ここ数日、まともに剣を握ったのは素振りのみである。

 それに私たちは今、森の中にいるが特段面白いものを見つけているわけでもなかった。


「今からさ、三人で組み手しない? 雨、森、バトルロイヤルっていう組み合わせで体を動かすってどうよ」


 私自身すら驚くほどの明るい声が出た気がする。こんな条件の中で戦えることはまず少ない、ストレス解消という、ただ自分がやりたいがために私は提案した。

 そんな言葉を聞いた二人は、すぐさまこちらへ向いて返事がなくてもわかるほどにやる気に満ちていた。


「二人ともやる気充分ってことで、早速やるわよ」


 そうして私たちは地面に降り立ち、そのままある程度離れていく。その後、いいタイミングでフェクトの声が聞こえてくる。


「そろそろ始めるけどもう準備は大丈夫か! 俺は大丈夫だけど二人はどんな感じなんだ、まだ離れて戦うか?」


 二人の声がハモる。その言葉が合図となり、私たちの組み手は幕を開けた。

 私は地面を蹴り、一気に駆け出していく。木々が時折邪魔だと感じる時はあるが、そんな木々を避けながら進んでいく。

 私たちは降り立った時点で三人ともがぶつかりあった。三者三様の攻撃が飛んでくる。その衝撃は凄まじいものであり、私たちはそのまま後ろへ少しばかり下がった。


「そんなので一瞬止まるわけないよね!」


 再び三人の攻撃はぶつかりながらも、全員共々一切緩める気はなく、せめぎあう。


「二人とも少しは力を緩めるニャー、どうして二度もこんな形でぶつかりあわなきゃいけないニャー! わたしが勝つんだから諦めなよ」

「はぁ? 寝言は寝て言えよナズナ! そっちの方が弱いんだから大人しくやられておけよ」

「二人ともうるさいわね。どうせ私が勝つことなんて決まりきってるんだから、さっさと力を緩めて私に斬られておけばいいのよ」


 そんな罵倒をしながらも私たちの顔はとても笑っていた。大雨でびしょびしょなのにこの瞬間がこの上なく楽しい。

 そんな感情が三人とも、溢れて出ているようだった。


「先に攻撃を仕掛けるのはわたしニャー! 獣脚・ダブルインパクト」


 ナズナが剣に軽く触れた。それはフェクトの方も一緒のようで、一瞬私たちは顔を見合わせてしまうと同時に、一気に押し出せるかのような形で、背後の木々に体が突っ込んだ。


「がはっ! 油断し過ぎた。めっちゃ軽い攻撃だったから、無意識のうちに体が緩んでた」

「ぐはっ! マジかよ、先に叩き込まれると思ってなくてガードもする暇なんてなかった。その上、あんなフェイントを仕掛けられたらさすがに想定外」


 体を強くぶつけたことによって、私もフェクトもすぐには立ち上がれない。それに、雨はだんだんと強くなってきており、視界も雨が邪魔になってくる。

 はらってもすぐに視界がぼやけてしまいそうなほどであり、長くは出来ないことを私は理解した。


「ここからは短期決戦って行こうかな。そう簡単にこれ以上ダメージを喰らわせられると思ったら大間違いやぞ」

「それは俺も同じだ、まさかあんなふうに攻撃を喰らうと思ってなかったから、ほんとうに腹が立って仕方ないわ」


 フェクトは先に飛び出し、ナズナに一撃加える。ガードしきれず、思わず悲痛な声が漏れ出てしまいそうなほどの反撃を喰らう。

 その続けざまにフェクトの力が籠った一撃がナズナを宙に軽く浮かせた。


「これバトルロイヤルって覚えているかしら? ナズナばかりに集中していたら足を簡単に掬われるわよ」


 木剣はものの見事に右足を崩した。その勢いを大事にするかのように、また一撃叩き込む。地面にめり込むような形だが、まだ戦えることを見越して私はもう一度木剣を叩きつけるかのように斬った。


「がああああっ!」


 フェクトの悲痛な叫び声が雨で簡単にかき消されるほどの強い雨。視界は悪くなり続け、ナズナが今どこにいるか判別が出来ないほどだ。

 攻めの姿勢をとってはいるが、正直不安以外なかった。それをまるでわかっていたかのように、ナズナが森の木々を幾度も渡り続け、そのまま勢いで木々から落ちてくる。


「ヘビーインパクト・獣拳」


 全身の骨から悲鳴が上がるかのような痛みが襲ってくる。だが、それが逆に良かったのだろう。まるで全てを破壊するかのように、私の一撃がナズナを襲う。

 覚醒化を果たしているが、全くの無意味でありそのまま木々に打ち付けられて気絶した。


「よっし!! 私の勝ちだね。二人とも、雨で体の動きが制限されていたのが大きな要因だね。服の重さがそのまま速度を落として狙いやすかったよ」


 とても晴れやかな気分に包まれながら、私は勝利を噛み締めるのであった。


エッセイ作品の投稿を始めました。

よろしければこちらもよろしくお願いします。

https://ncode.syosetu.com/n4551ls/

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