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剣聖少女 〜あてもない旅がしたいと願った少女の冒険譚、剣聖にもなれたので箒に乗って路銀稼ぎや旅を楽しみたいと思います〜  作者: 両天海道
11章 旅路

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724話 強さという欲望


 地面から飛び出してきたのは、モグラだった。それは魔族や人間を簡単に丸呑みに出来てしまうようなサイズ感をしている。

 空中に飛び上がった魔族の死体は、ものの見事に噛みちぎられ、とても美味しそうにモグラが頬張っていた。まるで空中を自由に飛び回る鳥のようにモグラは、自由気ままに魔族を簡単に平らげて降りてきたのだった。


「魔族を食った影響でしょうね、まだ強くなるわよ」


 思わずそんな言葉を言ってしまう。その言葉通り、まるで適合を始めるかのように、モグラの体は膨張し、取り入れた魔族の力を自分のものに変えた。

 その時こちらを見つめてきた表情は、まるで魔神のような目をしていた。手にしていた剣にも力が入り、攻めの姿勢へと変化させる。


「なんだ、やる気か? この俺様を見てまだ戦おうとする人間風情がいるとはな。俺は魔族よりも遥かに強い存在なんだぞ、お前たち如き俺様の敵ではない」

「へぇ、そんなことを言うんだな……雑魚風情が」


 モグラの表情が一気に険しくなった。今まで言われもしてこなかったようなことを言われ、そんな言葉を言ったフェクトに怒りを覚えている。

 今にも一触即発な状況に陥るが、それでもすぐにはモグラは動かなかった。いや、動くことは出来なかった。


「魔族を食ったごときでそんなにも強いって誇れるのか? 魔神王の力を持つ魔神フェクトが相手になってやるよ」


 モグラの表情は暗くなる。まるで今までのことが夢から覚めたかのような顔色である。そんな顔色を見てもフェクトは何も思っていないのか、無表情のまま近付いてくる。

 そんな姿を見て、モグラは一歩後ろに足が下がってしまっていた。


「フェクト、不用意に近づかないで! 表情はまるで死んだ魚のようなのに、全然諦めてないから」


 そんな言葉を聞いて、モグラの顔は大悪党みたいになる。


「バレちまったら仕方ねぇな、俺様って表情管理は上手いはずなんだけどな」


 凄まじい砂埃と共に、モグラは地中に潜った。気配感知に凄まじい速度で動いているのがわかり、その速さに目が回りそうだ。

 それでもフェクトの方は至って冷静であり、とりあえず結界を生成しその場で立っていた。


「どうせ気配なんて感知されているんだから、さっさと出てきたらいいものを」


 そんな言葉を聞いた直後、地中の中で結界とモグラ自身がぶつかったのか少しばかり衝撃が伝わってくる。


「回転ねぇ、そんなことをしても傷すら付けられてない時点で所詮はただの魔族もどきなんだよな」


 フェクトは指を鳴らす。

 心地よい響きのする音であり、それと同時に地中から悲痛な声が微かだが聞こえてきた。そのままモグラは様々な場所にぶつかりながら、地面に出てきた時には私自身がリバースした。


「気配感知を止めてなかったの? そりゃ、あんな動きを頭でずっと読み取っていたら吐きたくなるか」

「なんで達観視してるニャー! テレパシーでそれぐらい指示してくれてたらよかったことじゃん」


 ナズナの言う通りではあるが、それを予測して私自身も早めに対処するべきだったと後悔しかない。

 そんなことよりも、地面に這いつくばって痙攣を起こしているモグラは先ほどまでの威勢なんて欠片もない。そんなモグラに近付いて、なんの躊躇もなくフェクトは思いっきり平手打ちを繰り出す。

 耳を塞ぎたくなるようなほどの強烈な音が鳴っていた。


「ここまで簡単に伸びるなんて想定外だったな、少しばかり勢いをつけ過ぎてしまったかな?」


 何かブツブツと呟いているようだが、私にもナズナにもそれは聞き取れずただその場で立っていた。

 そんな時、モグラの意識が戻ったのか気配に揺らぎを感じる。まだ動くこともままならず、ただ目の前にしゃがみ込んでいるフェクトに少しばかり震えている。


「あ、なんだ目が覚めたのか! そりゃそうだよな、安心したよ。だってこんな簡単にくたばるような魔法は撃ってないなって思ってたからさ」


 まるで子どものように笑うフェクトは、モグラからしてみれば恐怖でしかなかったことだろう。


「もう、もう殺してくれよ! どうして俺を殺してくれないんだ、これ以上俺に何を求めるって言うんだよ。こんな地獄から俺を解放してくれよ、早くしてくれ!」


 完全に精神が崩壊した。モグラは泣き叫び、あの言葉を最後に、言葉にならない言葉を吐き捨てるかのように喋り出す始末である。

 そうして完全に理性を失ったモグラは、無差別に攻撃を始めた。魔族を食ったことによる魔力の発現で魔法を放ったり、地面に潜っては勢いよく出てくるのを繰り返す。

 私たちのいる場所さえもわからないのか、的外れな場所に向けられた攻撃だった。


「フェクト、これ以上は容認出来ないから。フェクトがしないのなら、私が終わらせるから」


 その言葉が本気だとすぐに熱意が伝わったのか、フェクトは右手を前に差し出し、魔翔弾を一発放った。

 そうして飛び出てきた瞬間、モグラの脳天に突き刺さるようにそのまま消滅を果たす。


「ほんとうなら、もう少しはやれる存在だと思ったんだけどな」


 フェクトがそんな言葉を言ったのは、少しばかりの期待があったのかもしれない。


「あのモグラはバカなことをしたよ。あんな風に魔族なんて食ったら体が適応するわけがない、だから最後はすり減っていた精神が焼き切れて、精神が崩壊したニャー」

「少なからず強くはなった。その代償はモグラ自身が思っているよりもよっぽど酷いものであり、それが最後に反逆を見せたってことかもね」


 おそらくあのモグラは何度も魔族を食っていたのだろう。

 そこまでして強さというものに執着したモグラは、まるで幼女時代の私を見ているようなものだった。初めて旅に出たいと思った時から、私は強さというものを追い求めていた。

 強くならなければ、道半ばで死んでしまう。

 それは今となってみれば、いくら強くなっても全くもって足りない。そう感じてしまうほどに私は強さという鎖に、ガチガチに締め付けられているのかもしれない。

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