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剣聖少女 〜あてもない旅がしたいと願った少女の冒険譚、剣聖にもなれたので箒に乗って路銀稼ぎや旅を楽しみたいと思います〜  作者: 両天海道
11章 旅路

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718話 作戦会議


 重い空気が流れている。それに気が付いていないのは、ナズナだけである。ナズナは自分の欲を満たすためならば、こうして駄々を捏ねることは何度もあった。

 だが、この状況で決してナズナの願いを聞き届けることは出来ないと私ですら確定させていた。それほどまでに、この狐園と呼ばれる場所は魔族に襲われている。

 踊り手たちの体は、歳の割には少しばかりやつれ加減だったり、中には頬がこけている連中までもがいた。そんな彼ら彼女らは、疲弊しきっていたからだ。

 いつ襲ってくるからわからない状況で、体は食べることも睡眠をとることさえも拒絶しているような状態に陥っている様子である。

 こんな状況でも、来てくれた人たちには精一杯のおもてなしをしようという心が少なからずあった。だがそれは段々と限界へ向かっていき、最初は感じていた華やかさよりも絶望に染まりかけた顔の方がしっくりしてしまうほどだ。


「ナズナ、今回の作戦はどうしても連れていくことは出来ない。今ここでナズナが戦闘部隊に入った場合、私たちが攻略を終える前に狐園は滅びる」


 私はナズナに向かってまるで深海のような真っ暗な声色で言った。そんなナズナの顔はとてつもないほどに引き攣っており、未だにきちんと理解している様子ではない。

 そんなはずはないとさえ思っている顔であり、周りの獣人たちの顔を見渡すが、絶望に染まっていく顔を見てナズナはことの重大さにようやく気が付いたようだった。


「ここまで自分が愚かだと思ったことなんてないかもニャー、自分の欲望を信じて動いて、ここに住む人たちを危険に晒すことだった。ほんとうに申し訳ありませんでした」


 ナズナは、深々と頭を下げた。それはとても長く、それだけナズナの本気度が伝わってくるかのようなものであり、少しばかり狐の獣人たちは明るさを取り戻している。

 そうして、食べられない体に無理を言わせながらそれでも料理を頬張り出す狐の獣人たち。それは痛々しい光景だと第三者が見たら言うかもしれない。

 それでも私たちから見れば、希望に向かって確実に歩き出した光景だと思えるものだった。


「とりあえず作戦は、私とフェクトが一気に攻める。そこで私たちはいちいち全部を倒したりはしない。撃ち漏らしは確実に狐園を目指してくると思うから、そこをナズナとアゲを筆頭に防衛に努めてほしい」


 アゲは少しばかり熟考しているように見えた。どのように発言すれば良いか、どのような言葉を使うべきか、頭の中で言葉を使ったパズルを組み上げている、そんな感じがする。


「どうして全部を倒さないですか、こちらの負担を考えると相当なリスクがこちらには生じると思いますけど、そこはどういった考えをお持ちですか?」


 先に口を開いたのはアゲではなく、副官の方だった。アゲはすぐさま顔を上げ、何かを言いたげな表情をしていたがそうはさせないと言わんばかりに副官は続けて言った。


「ぜひ剣聖様のご意見を聞きたいのですが、最初から頭ごなしに否定されるおつもりだったアゲ様とは違ってね」


 随分とバチバチした関係だと思ってしまう。このようなことになったことに対して、副官なりの怒りも籠っているのがわかる。

 それほどまでに副官は、この事案に対してとんでもない熱量を感じる。


「早期解決を目指し時間を掛けないためです。時間を掛けてしまうとかえって危ないこともありますから」

「そのためなら、こちらの負担とリスクが跳ね上がっても良いというお考えなのでしょうか?」


 声色でわかる。副官はとんでもないほどに怒りに満ちている。それは剣聖という立場にある私にも関係なくあたっているあたりからも、余裕がもうないということだった。


「いい加減にしろオキツ! これ以上何かしらの発言をするならこの場から降りてもらうけど、それでも良いのか? そんなわけにはいかないことぐらいわかっているはずでしょうに、一度大きく深呼吸でもしろ」


 そうして私の目を見て、アゲは深々と頭を下げ謝罪の言葉を言った。


「そんな話をしている最中で悪いが、どうやらお客陣がやってきたみたいだぜ」


 アゲとオキツはすぐさま立ち上がり「総員戦闘配置に付け! 子ども、お年寄りたちの避難誘導も忘れずに行うように」とアゲは言った。

 その言葉を聞いて、ドタバタと去っていく。その散らばりの速さはまさに歴戦の猛者であり、アゲたちが今までどれだけの時間を掛けて守っていたかわかるようなものだった。


「ナズナは先ほど決めた通りにアゲたちと行動してね、フェクトはいつでも戦闘態勢に入れるように準備を怠らないようにね」

「アリア、最初から覚醒化してても大丈夫だよね。わたしという脅威がこっちにもいるぞって示すには一番楽だと思うんだけど」

「それでお願い、彼ら魔族がここを落としたい理由はわからないけど、新たな脅威が三人もいるってわかればそれなりの対応をしてくると思うから」


 私たちはそれぞれの持ち場に行くべく移動する。今から始まる戦いに胸が躍っていないと言われれば嘘だ。私はこれから始まる戦いにワクワクが止まらない。

 それに何より、今までの魔族とは違う連中というだけでテンションが上がっているのがわかる。それはフェクトもナズナも同じであり、絶対的な強さを見せつけるという強い意志が気配に入っているような気がした。


……


「この気配、あの狐風情が何かしら連れ込んだのか、ほんとうにしぶとい奴らだ。まぁそれはこれでお終いだ。もうこのような戦いをするのにも飽きたところだしな」

「ご報告します! 先ほど殺されたやつの情報を残滓から汲み取ったところ、相手は剣聖、魔神王、獣人族の三名であり、外の世界において歴代冒険者の中でもトップを走る連中のようです」


 剣聖……それは懐かしい響きだった。そのような存在とこの俺様は戦ったことがある。その時は両者共々深傷を負い、その場から互いに逃げた。

 その後剣聖となる人物は死亡、俺様もまた深傷の治療に数百年という時間を要した。

 だが、あの頃とは違うことを今の剣聖に伝えるには絶好な機会であろう。

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