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剣聖少女 〜あてもない旅がしたいと願った少女の冒険譚、剣聖にもなれたので箒に乗って路銀稼ぎや旅を楽しみたいと思います〜  作者: 両天海道
11章 旅路

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716話 絨毯と新たな魔族


 遅れてしまい申し訳ございませんでした。


「お前らほんとうにいい加減にしろ! それに狐野郎、お前の目的は一体なんだったんだ、アリアが戯れるために現れたってわけではないよな?」

「助けてほしくて会いにきたんです、すっかり抜け落ちていました」


 彼はほんとうに忘れているようだった。それを聞いたフェクトは呆れを通り越して「やっぱり」と、言いたげな顔をしている。


「でも剣聖様は受けてくださるつもりがないんですよね」

「とりあえず内容を聞かせて、その後にじっくりと判断するからさ」


 そうして彼は一枚のクエスト用紙を取り出した。そこに書かれている内容はシンプルであり、魔族の討伐クエストであり、それも複数の確認がすでにされているようだった。

 場所は、狐園と呼ばれる彼の住んでいる場所だろう。


「君の強さで勝てないの? そんなに弱いならあんな魔法を使えないはずだし、それともそれほど強いって感じなの」

「こっちに現れる魔族よりは強い存在です。こちらの魔族が二十人で飛び掛かったとしても、手も足も出ないような強さをしています」


 そのような話はほとんど聞いたことがない。それに何より、場所が変わるからといってそこまで魔族の強さは変化なんてするとは到底思えない。

 私がとても渋い顔をしながら不思議そうにしていると、その反応がまるでわかっていたのか彼は何も言わなかった。


「それにしてもさ、君ってそういえば名前って何て言うの? 私、基本的に名前を聞かないことが多くなったりしてて、聞くのをすっかり忘れていたよ」

「大変申し遅れました、狐園にて里長を勤めていますアゲです。これからはよろしくお願いします」


 アゲは深々と頭を下げた。


「それで本題に戻りますけど、彼らはとてつもないほどに凶暴化しており、その原因はおそらく場所の変化だろう。それだけ狐園は彼らを変化させられるほどの場所にあるんです」


 そんな場所がほんとうに存在するのか怪しさしかないが、アゲが言うのならそれはほんとうのことなのだろう。


「それでどうやって行くの? マップにはどうせ載ってない場所なんでしょ」


 アゲは手を差し出し、私たちは少しばかり警戒心を残しながらもその手に触れた。

 次の瞬間、私たちは上空にいた。

 あまりにも突然すぎる状況で、ナズナは軽いパニック状態を起こしているが、私とフェクトは至って冷静にほうきを取り出す。


「似たような状況は前にもあったから良かったけど、さすがにナズナはそうなるよね」

「とりあえずナズナは俺に任せてアリアは先にほうきに乗れ!」


 浮遊魔法で体を自由に浮かせ、フェクトはナズナを抱き寄せる。ナズナはまだわけもわからず騒いでいるが、だんだんと落ち着いてきたのか、静かになった。

 おそらく睡眠魔法でも掛けたのだろう。ここでジタバタ暴れられるよりはよっぽどマシだと即座に判断したのだとわかる。

 それにしても、アゲは一体どこに行ったのだろうか? あたり周辺を見渡すが姿は見えない。そんな時だった、大きな手を叩く音が一発聞こえたと同時に、大きな変わった絨毯と思しきものが現れる。


「これって油揚げ? ダイナールでも食べられる場所が少ないっていう食材じゃん」

「いや、これは絨毯であってる。おそらく油揚げを模したものだろう。アイツの趣味じゃねぇの?」


 偶然かどうかわからないが、彼の名前はアゲである。油揚げから取られていても不思議ではない。そうしてアゲは絨毯の上に座っていた。

 こちらへ手招きするかのように、私たちの体は引き寄せられそのまま絨毯の上に落ちる。


「何の説明もなしにすみません、こうした方が面白いと思いまして。せっかく狐園に向かわれるのだからこうしたお遊び心もあった方がよろしいかと思いまして」

「先に説明する気は最初からなかったわけね、それにしてもこんな絨毯を空に浮かせているのね、ほうきが一般的だし、魔力燃費が悪いから使っている人を見たのは初めてね」

「我々はこれが一般的ですね。こちらの方が荷物も置けますし、それに快適な空の旅も出来ますから。みなさん、ここからは我々の敷地に入りますからね、それではご案内します」


 指を鳴らすと同時に絨毯ごと私たちは転移した。そうして目を開けるとそこには、狐の像が等間隔に置かれ、変わった形の赤い門が奥にあった。


「このまま真っ直ぐいけば狐園の入り口です」


 私は腰に下げてあった剣を抜き、フェクトと眠っているナズナを守る。そこに現れたのは確かに魔族ではあるが、私たちが知っている魔族ではない。

 だからといって魔神でもなく、剣を持つ手にも力が入る。


「貴様は何者? 魔族ではあるみたいだけど、随分とアイツらとは強さが違うわね」

「俺様の攻撃を最も容易く弾く女子がいるとはな、思いもしなかった。貴様こそ、ほんとうに人間か? 俺様が知っている人間とはまるで違う。そのような強さを持ち合わせたものは見たことがない」

「へぇーそう。まぁ私はダイナールにおいて最も強き者だと、君の仲間たちにも知らせるといいよ。あ、そっか。どうせここで死ぬんだから伝えられないか、ごーめんね」


 強靭な爪を生かした攻撃ではなく、魔法攻撃。やはりこいつらもまた魔法攻撃が主軸というわけか。


「オフセット」


 まるで心臓を一掴みされたかのように倒れ込む魔神。魔力が途端に封じられた挙句、ダメージを喰らうのだから彼からしてみれば、踏んだり蹴ったりだろう。

 悶え苦しみながらもどうにかしようとしているのが目に見えてわかるが、あまりの痛みにどうすることも出来ずただ、早く痛みが終わらないか待っている様子である。


「あれ、さっきの攻撃は強そうに感じたのに、もうそれで終わり? 私さ、ほんの少しは期待はしてたんだよ、ほんとうに期待して損したよ」


 私は何の躊躇もなく、魔族の心臓に剣を突き刺した。そうして、そのまま首を切り落として彼は消滅をした。


「案外剣聖様は躊躇いなんてないんだな、普通ならもうちょっと会ってもいい気がするが」

「何言ってんだ、アリアは俺やナズナが敵になったとしても何の躊躇もなく首を吹き飛ばせるぞ」


 その言葉を聞いていたアゲは、私を見る目が少しばかり恐怖という感情に支配されているようだった。


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