組織とキャンプとカレー作り・其の十壱
首領の後ろ姿を見送ってからウコンさんと別れ、浜沿いにしばらく歩く。
日差しは強いものの、潮風が火照る肌に涼しさを与えてくれるお陰で、心地よい散歩が出来ている。
子供と、その子に手を引かれている親である男性の賑やかな掛け合いがすれ違い様に遠くなっていく。
平穏な時間を楽しんでいると、少し向こうのパラソルの下でフェンネルさんが海を眺めているのが見えた。
濃い紺色の髪は、後でまとめられているが海から風は勢いが良いのか、さらさらとその纏められた髪を靡かせている。
こちらが近づいているのに気が付くと、慌ててフイとそっぽを向いてしまった。
表情は見えないものの、耳が赤い。パーカーを着ていても、肌が露出する水着でいるのが恥ずかしいのだろうか。
いや、この人普段ボンテージなんだから、もっと肌を露出して
ないか?
むしろ今の方が出ている表面積が少ないのでは……思わず立ち止まり、頭を書きながら悩む。
「ねぇ」
考え事をしていると、パラソルの方から声がかかる。
で、必死にパーカーで胸の辺りを隠し恥じらっているフェンネルさんが不機嫌そうにこちらをみていた。
「……座れば?」
「……え?」
どうしたと言うのだ。あのフェンネルさんが、とても大人しい。パラソルの下に座りながら、こちらを睨み付けているものの、声に刺々しさがない。
つっけんどんな態度が多かったので、とても新鮮だ。
「え、えっと? 座るって隣に?」
「……」
苛立たしそうな顔をした後に、そっぽを向いてしまった。
これは、どうするべきだろうか。
……とりあえず、パラソルの軸を挟んで隣に座る事にする。
先程まで日差しに当てられていたからか、急に影に入った事で視界が白黒に明滅する。
日差しが遮られ、風の涼しさがより感じられる。
その心地よさに一息ついてから、正面の海を眺める。
フェンネルさんは、一向にこちらを向かずにうずくまっている。
しばらく沈黙が続き、辺りの賑わう声と波の音だけが、聞こえる。
「ごめんなさい」
ぼうっと波を目で追っていると、隣からフェンネルさんの消えそうなくらい小さな声が聞こえた。
「……え?」
「……私の、性なのよ」
「私の性? なんの話ですか?」
「あなたが、倒れたの、私の性なの」
倒れた、というのはこの前の体調崩した時の事だろうか。
いや、しかしあれは俺の体調管理の問題であり、決して彼女の性では……。
こちらを見つめるフェンネルさんの目には涙が浮かんでいた。
「……カレー店の店員の増員、止めたのは私なのよ」
「ん……ん? それってどういうことです?」
「……クローブからね、貴方が店を回すのに追われているから、追加の人員が欲しいって申請があったの」




