組織とキャンプとカレー作り・其の十
着替えてから海水浴場へと向かうと、昼を少し過ぎたぐらいだからか、家族連れの海水浴客で賑わっていた。
どうもここは、所謂地元向けの海水浴場らしくそこまで若い人だけの集まりなどは見られない。なんというか、のほほんとした光景である。
「穏やかだろ? ここは波が静かだし、ここから近くにもっと良いサーフスポットもある。ここに、来るのは地元で遊びにきた孫を連れてくる老人とか、元々地元に住んでる家族ぐらいしか来ないんだ」
後ろからウコンさんが声を掛けてきた。
「へぇ……よく、そんなスポットを知っていましたね」
「まぁ、昔から……ほんとに昔から来てるからなぁ」
染々とウコンさんは呟く。遠くの海を見つめながら、何か懐かしむように。
同じように、海へと目を向けると静かに海を小さな波を作りだしている。
海鳥がその揺れに合わせて、揺れたり、飛び立ったりと好きずきに動き回っており、平穏な景色に溢れていた。
「いやぁあ! 諸君!! もう準備体操は済ませたかね!?」
しばらく静かに海を眺めていると、その平穏さに似つかわしくない賑やかな声がこちらを呼び掛けきた。声からして首領だろう。
その声の方向を向けば、思わず唖然と口を開けたままになってしまう。
「おお、首領。もう完全に準備万端ですね」
「ふはは、数週間前から楽しみにしていたからなぁ!! 今のワシに一片の抜かりもないぞ!」
確かに浮輪とシュノーケルを持ち、ビーチボールを小脇に抱えていれば、海水浴場の備品としては完璧ではあろう。
ただ、そこに立っている首領の姿は未だに黒いローブを羽織ったままである。
「え、えっと首領。そのローブは取らないんですか?」
「ふははは、当然だろう! 悪の首領として、当然の事だろう!!」
そうだろうか? いや、もうそういう事なのだろう。
考えるのも面倒臭くなってきたぞ……。
「ま、夕方までは自由時間だ。田中くんもゆっくりと羽を伸ばすといい!」
そういうと、首領は砂煙を上げて海へと向かって走っていってしまった。
あの人はなんというか、本当に掴めない人である。




