組織とキャンプとカレー作り・其の六
バスに乗りしばらくすると、賑やかだった車内は急に静かになってしまった。
なんでも、先ほどの口上を言う為にほとんどの面子は集合の2時間前に集まっていたらしい。
……馬鹿なのだろうか。
俺の口上を作ったことから薄々感づいていたが、一番口上を楽しんでいるのは、首領である。
現在、首領は前の座席に頭を寄りかからせて爆睡している。寝言であろうか、『次は田中くんのポージングもぉ…』と呟いている。
……馬鹿なのだろう、きっと。
呆れながら車内を見渡していると、不意に後ろからこつりと頭に何かがあたる。
手にとってみると、金属の冷たさを感じる。
「よぉ、今朝は付き合ってくれありがとうな、田中」
振り替えれば座席の上から顔だけだして、こちらに爽やかや笑顔を振り撒いている男性。
先ほどの紹介でウコンと名乗っていたはずだ。
手には缶コーヒーが握られている。それを受け取ると、ウコンはもう片方の手に持っていたコーヒーをあける。
「どうも……ええと、ウコンさん、でしたっけ?」
「おう! お前さんとは余りあったことはないが……お前さんの店に材料を卸す担当は俺なんだぜ?」
「えっ、じゃあ凄いお世話になってるじゃないですか!」
「まぁまぁ、それは良いじゃないの、お互い仕事してるだけなんだから。それよか、お前さん話題になってるぜ?」
からからと笑うウコンさん。
話題になってる?
「話題になってるって……え、そうなんですか?」
「おう! なんせ、あの姉弟が一般人に対してあれだけなつくなんて、珍しいからなぁ」
「一般人……?」
姉弟というのはクローブちゃんとウイキョウの事であろうけとど。
「あぁ、ほら俺らからしたらって話な? 要は異能持ちか、そうでないかだ」
異能。
最近で言えば、正義協会で。もっと前ならウイキョウが言っていた、彼らの特性。
「異能持ちはね、大体何かしらその能力を、持ってるという理由で辛い目に、あってるんだよ」
……なるほど、今まで聞いた話の中で、彼らがよい環境にいたとは決して言えない。
「あれ、『俺ら』って事はウコンさんも異能を?」
そう問うと、ウコンさんは静かに俺の前へと手のひらを差し出してくる。
「その通り。俺の能力はな……」
ウコンさんが差し出した手を軽く振ると、何もなかったはずの手のひらに、いつの間にか缶コーヒーが握られていた。
「こんな感じで、物体の移動が出来るのさ」
「おおう……凄いですね」
物体の移動。誰しも一度は憧れる能力では無かろうか。
「仕入れた在庫を仕舞うときとか便利そうですね……」
「ははは、まぁ本部でしてる仕事も似たようなものだしな」
からからと笑いながら、ウコンは取り出したコーヒー開け、口をつけた。
「何々? 能力の話してんの?」
不意に、反対側の席から声があがる。見れば、少女が一人、キラキラとした目でこちらを見ていた。




