組織とキャンプとカレー作り・其の弐
朝早くと言えども、8月の半ばともなれば肌にじっとりした汗が僅かに浮かぶ程度には暑く、片手に持ったタオルで汗を吹きながら、蝉の泣きわめく道を歩いていく。
倒れてからしばらく、無理しないように体調管理は細かく行い、やっとのこと体力も戻ってきた所だが、今日から店は夏期休業だ。
本来、この時期は飲食店では書入れ時たが、首領命令で休業及び慰安旅行に参加との事だ。
つくづく悪の組織とは思えないホワイト企業ぶりである。
以前もらった慰安旅行のしおりによると、集合場所は組織の本部であり、俺は久しく来ることのなかった本部へと向かっていた。
傾斜の緩やかな坂を登っていき、本部へと目指す。
本部は町の郊外手前にある、小高い丘にあり、歩いていくには少しばかり良い運動をする事になる。
その道中、住宅街を通るが夏休み真っ盛りの為か、ほとんど人に出会わない。
自分の足音と、蝉の鳴き声だけの空間をいそいそと進んでいく。
数十分程進んでやっとのこと本部の前にたどり着いた。
「おはよう、田中」
入り口の近くで、クローブちゃんに声をかけられる。
体に対して不相応に大きなリュックを背負い、ふらふらしながらこちらに向かってきた。
「おはよう、クローブちゃん……ってずいぶん大きなリュックだね、一体何をそんなに持ってきたの?」
「これは、おやつ」
ふんすと、答えるクローブちゃん。
開けて見せてくれてのは、クローブちゃんの腰まであるリュックに入ったお菓子の山。
一つ見てわかる事があるとすれば、この程度の量では行きで食べきるのだろうな、という事である。
俺の目も大分彼女の食欲に馴れてきたようだ。
「というか、着替えとか他の荷物は?」
「問題無い、ウイキョウに持って貰っている」
「俺としては、そっちの重いはずのリュックを持ちたいのだがな……」
後ろから聞こえる声に振り向けば、ウイキョウが二つのバックとキャリーを一つを携えて立っていた。
「問題無い、自分が食べるお菓子は、自分で運んでこそ美味しい」
「姉さん、非常に素晴らしい心がけなのだと思うが、その道中に自分が何度支えた訳だか……」
「大丈夫、報酬はしっかりと渡す」
そう言って、クローブちゃんはウイキョウの両手に一杯のウサギの書かれたラムネを手渡す。
なんとも、言えない表情で礼をいってるウイキョウの姿を見て苦笑いしていると、良く通る低い声がこちらを呼んでくる。
「ヤァヤァ、田中くん、クローブ、ウイキョウ。よくきたな!! さぁ、こちらに来たまえ。皆は揃っているから、後は君たちで全員集合だ!!」
声の主は、首領である。頭から足の先まで、完全に、黒いローブで包まれ、赤いチェスのクイーンの駒があしらわれた杖を付きながら、ブンブンとこちらに手を振っている。
「はい、今行きます」
クローブちゃんがすぐに反応し、手早くリュックを背負いふらふらとかけていく。
後を追うように俺とウイキョウが進み、首領に招かれて本部の中へと入っていった。




