俺とカレーと皆の間にあるもの・其の十参
「そういえば、ここに来た理由って結局の所なんなんですか?」
食事を終えて一段落した所で、気になっていたことを尋ねる。
フェンネルさんは、思い出したかのように口を大きく開けると、バツが悪そうにごにょごにょと小さく何かをつぶやいた。
しかし、それを聞き取ることができない。
「え、えっと?」
「……」
再びここに来たときと同じように押し黙ってしまう。
そして、何か言いたそうに俯いたり、顔をあげたりを繰り返した後で、鞄からそれなりに厚い冊子を二冊、俺に押し付ける。
思わず受けとるが、意図が分からずフェンネルさんの顔を見つめてしまう。
「首領にいわれて!! それを渡しに来たの!! それだけ……それだけよ!!」
そう怒鳴ると、逃げるかのように駆け出して出ていってしまった。
突然の事に追いかけれず、戸惑いながら立ち上がった俺が残される。
ゆっくり横を見ると、クローブちゃんが何か呆れたかのような顔をしてドアを眺めていた。
しばらくして、ため息と共にこちらを向くと、冊子の内の一冊を俺の手からとり、席を立ち上がる。
「今日はもう帰る……店の開店再開は体調が大丈夫になってからで構わないと、首領から言われているから、また、教えてね」
フェンネルさんへの戸惑いからか、ああ、うん、という簡素な返答しかできず、彼女をその場で見送る形となってしまう。
ドアに手を掛けた辺りで、クローブちゃんは振り向いて冊子を指差す。
「それ、しっかり読んでおいてね」
それだけ言うと、彼女はドアを開けて出ていった。
がらんとした部屋で俺だけが残される。
一体何なのだろう。
フェンネルさんは明らかに様子が可笑しかったが、クローブちゃんもまた、何か雰囲気が可笑しかった。
まるでフェンネルさんを攻めるかのよう睨んでおり、前はそんなことはなかったはずだ。
自分の及ばない所で一体何があったというのか、呆けている頭に、俺が入院している間につけられていたのだろう、聞き覚えのない風鈴の音が響いていく。
ふと、手渡された冊子が何だったのが気になり、目を落とす。
緑色の画用紙らしき紙に黒字で印刷されたそれには、大きく書かれた題とデフォルメされて首領(正確には、黒づくめローブの何か)が虫取アミを持って木々の間を駆けている様子。
綺麗に製本されたそれに書かれた題は、
『秘密結社モダルカン夏の慰安旅行~思い出一杯のサマーキャンプ~』
「中学校かっ!!」
静かな店に、ひとり突っ込みを入れた声が反響する。
それは、外で騒がしく鳴き始めた蝉の声と合わせて、これからくる夏という季節の騒がしさを予見しているようであった。
ここまで、読んで頂きありがとうこざいます。
感想をいただくと、作者はそれを食べて進化の繭からグレートなんちゃら程度に強化されますので、よろしくお願いします。




