俺とカレーと皆の間にあるもの・其の十弐
「え、あぁ、はい。じゃあ、どうぞ」
予想だにしないことに大分戸惑う。
確かに、フェンネルさんは俺とクローブちゃんの調理スピードについていけず、まごついているだけだったが、それが居心地悪かったのだろうか。
「あー、えーと、大丈夫ですか?」
「平気よ! これくらい」
そう言いながらフェンネルさんは菜ばしでキャベツをトルティーヤの上に乗せ、その上からカレーを乗せていく。
「あ、あれ?」
そして、包もうとして止まってしまう。
中身が多かったらしく、包むことができなかったようだ。
「ああ、もうっ!! このっこのっ……あっ」
むきになり、無理やり包もうとして破けてしまう。
汚れた手と俺の顔を狼狽えた顔で度も見返してくる。
とりあえずお絞りを渡し、一度具材を取り除く。
「じゃ、じゃあ、一度手本として作ってみますね」
具材を置くにあたって、気を付けなければならない事は量と置く場所である。
量は、考えているより少な目にし、円の中心から少し上に置く。
ここに意識すると綺麗に巻くことができる。
「はい、こんな感じだね。量は少ないけど豆とカレーで結構ボリュームがでるよ」
「……できた」
自慢げに巻けたトルティーヤを見せてくるクローブちゃん。
その後ろでおずおずとフェンネルさん、少し不恰好だかしっかりと巻けていた。
「よし、じゃこれを、トースターで焼いていこう」
「火が通るの? それ……」
訝しげにフェンネルさんが、尋ねる。
「中身はほぼ、火が通った状態だからね。後は熱が入れば問題ないよ」
数分後、トースターから香ばしい香りが漂ってくる。
トルティーヤが、焼けて少しだけ焦げ目がついたら取り出す。
「取り出したトルティーヤを、ちょっとおしゃれな巻き紙で巻いて……はい、ビーンズカレーブリトーの、出来上がりだ」
布を敷いたバスケットに入れればそれだけで欧風のお洒落雰囲気が出てくる。
一口噛めばスパイシーな香りが溢れだし、鼻から胃にダイレクトな一撃をいれて空腹の鐘の音を打ちならす。
それを止めるのは、次に口のなかに一杯に満たされるカレーの旨味と豆のダブルの旨味と、キャベツの甘さ。
三つの味が混ざりあい、幸福の激流となって駆け巡っていく。
大きさはそれほどではないが、トルティーヤは意外と腹もちがよく、満足感は十分だ。
「……」
「……美味しいわね、これ」
目を輝かせ、黙々と食べていく二人。
しっかり満足してくれたようでなによりだ。さて、俺も自分のブリトーを作るろ「おかわり」う……。
なるほど、いくら腹もちが良くても、一つじゃクローブちゃんの食欲に勝てる訳が無いよな……。




