俺とカレーと皆の間にあるもの・其の十壱
「さて、まずはキャベツを千切りにしていこう。生で食べる訳じゃないから少し太くても問題ないよ」
「ん」
今までの営業で慣れたのか、自然横に立ってキャベツを切り始める。
それに対してフェンネルさんはどうすればいいのか分からず、まごまごとしている。
なんとなく最初にクローブちゃんが手伝おうとした時のようでクスリと笑いそうになったが、後が怖いのでなんとか耐えた。
「油をひいたフライパンでキャベツを炒める。軽く塩、胡椒で味付けても良いし、ここで本ちょっぴりカレー粉をいれても美味しいね」
蒸気の弾ける音の中で、キャベツがしんなりとし始める。
余り火を通すとシャキシャキとした歯応えが消えてしまうので、ある程度の火が通れば止めてしまう。
「千切りのキャベツは全体に火が通ってなさそうでも、余熱で充分日が入るから、味付けしたら直ぐに止めてしまっても良いね。それで、これはボウルに移して一旦放置」
「更に使うのがこれ、ミックスビーンズ。ひよこ豆の入ったやつがオススメだね」
スーパーで買ってきた食材で、缶詰でもパウチの物でも構わない。
よく水を切るためにザルにあげておく。
「そういえば、今回はカレー料理じゃないの? 倒れる前に寝かしていたものは、もう食べちゃったんだけど……」
「ふふふ、そんなときの為にとっておき……これだぁ!」
そう言って手をかけた場所は冷凍ストッカー。
取り出したそれは、冷たく凍りながらも、その黄金色の輝きを失ってはいなかった。
そう、カレーである。
基本的にデザートに使う甘味や、肉の塊などをおいておく場所である。
冷凍という状態の為か、ここはクローブおゃんも手をつけていなかったらしく、ほとんどの食材が残っている状態だ。
そして、それ故にその食材達で隠されるように置いてあったこれのそんざいには気づかなかったのだろう。
「そ、そんな………」
冷凍されたカレーを見て、クローブちゃんが膝をつく。
「それなら、田中が倒れた二日目にも、カレーが食べれた……ッ!」
「まって、営業二日分あったはずのカレーを一日で食べきってたの!?」
恐るべし胃袋である。ホントに底なしなんじゃないのか、この娘は……。
「あー、おほんっ。 このカレーはね保存の為にジャガイモとかの野菜は潰して、普通よりも少し水分を飛ばしてあるんだ」
解凍するため電子レンジに入れ加熱。
数分して解凍したカレーは、普段ご飯にかけるものよりドロッとしたものなっていた。
「という事でこの豆の水煮をカレーにシュートッ!」
カレーを合わせて、豆を潰さないようにさっくりと混ぜる。
「さ、後はこれをトルティーヤで巻けば完成だ」
「ちょ、ちょっと」
そう言って調理を進めようとすると、服の後ろをつままれ引っ張られる。
「わ、私にもやらせなさいよ……」
バツが悪そうなフェンネルさんが、恥ずかしさで顔を紅潮させながら頼んできたのだ。




