俺とカレーと皆の間にあるもの・其の十
そんなわけで、クローブちゃんと共に近所のスーパーに向かい、昼食の材料を買ってきた訳だが、クローブちゃんのご機嫌はやや斜めになっている。
欲しい食材がなかったとか、そういう事ではない。
原因はここを出るときにはいなかった、増員一名の為である。
「……何かしら?」
組織の経理にして、一応俺らの上司にあたる人。
フェンネルさんだ。
買い物に行く途中、たまたま外で出会い……なぜか一緒に行動することになった。
理由を聞いても答えてくれないし、黙っているためにわからない。
「えーと、それで結局、何の用ですか?」
「……」
何か言いたそうなのだが、先程からこのように黙ってしまっている。
どうしたのだろうか……そういえば入院していた時にお見舞いに来てくれた時も様子がおかしかったような。
「……のよ」
「へ?」
何処と無く震えた、か細い声。
しっかりと聞き取ることが出来ず、聞き直してしまう。
「お腹がすいたのよ!!」
相手を攻め殺すかのような怒号に、思わずたじろぐ。
そして、フェンネルさんはそのまま押しだまってしまい、若干そわそわ、というよりは苛立っているかのように貧乏ゆすりを続けている。
そして、その顔は晴れることなく、重苦しい表情のままであり、それを見ていたクローブちゃんの顔がより鋭い、攻め立てるような顔をしていたので、やはり何かを原因があるのだろう。
「え、えーと」
「田中、お腹すいた。はやく食べたい」
フェンネルさんからもう少し聞き出す為に、声をかけようとすると、クローブちゃんから静止が入った。
クローブちゃんの方を向いてみるのむすっとしている彼女の腹の辺りから、大分景気のよい虫の音が聞こえている。
「あ、あぁごめんごめん。すぐに料理に取りかかろう」
クローブちゃんも我慢の限界のようなので、先に料理に取りかかることにする。
考えてみれば、今まで言いたい事をはっきりといってくるフェンネルさんがここまで言い淀んでいるのは珍しい。
聞いてみるにしても、まずは空腹を治めて落ち着いてからの方が話しやすいというものだろう。
「ということで、さくっと作れる物……という事でこちら」
広げて見せたのは薄い、円形の生地。
ピザ生地にも見えるが、それよりも薄く、ざらついている。
「……トルティーヤ?」
「exacta、その通り! 今日はこれを使ってファストフード的な物を作ろう」
「え、えさくた……?」
「exactaはスペイン語で正解……トルティーヤがメキシコの食べ物だから、公用語で使われてるスペイン語で答えたかと」
フェンネルさんの疑問にクローブちゃんが答える。
少し気取ってスペイン語なんて言ってみたけれど、そう淡々と説明されると少し恥ずかしいな……




