俺とカレーと皆の間にあるもの・其の八
結局のところ、俺が退院したのは一日空いた二日後の事だった。
体は良くなっていたが、医者に折角だから休んでいけと言われ、やむなくもう一日入院したのである。
退院した足で真っ先に向かったのは店舗だった。
一応、休業状態でありある程度の対処はクローブちゃんがしてくれたとの事だが、一抹の不安が残る。
というか、仕込み中の鍋とかどうしたんだろうか。
一応食べれる程度には出来上がっては居たものの、お店に出せるような物ではないし、かといってここ数日放置してしまったのなら、衛生的にもよくないだろう。
かくして、不安を隠せぬまま歩みを進ませる事数十分。
病み上がりの体が少しばかり悲鳴をあげているが、復帰の為にはいい運動になっただろう。
たどり着いた店先には、何故だろう、数日ぶりなだけだと言うのに嫌に懐かしく感じる。
扉を開ければ、ここ数日は感じなかったスパイスの薫り。
同時に、自身の腹の虫が大きく自己主張するかのようになり響く。
思い返してみれば、病院食というのは塩分控えめで、正直な話物足りなく感じていたのだ。
ちょうどいい、何か食材が残っていたら、軽く拵えてしまおう。
そんな事を考えながら、俺は店の中へと入ったのである。
「おおう……」
思わず声をだしてしまったのは、フロアの綺麗さだ。
倒れる前、連日の来店で間に合っていなかった細かい所が、細かに清掃されていた。
テーブルはしっかりと乾拭きされており、床は恐らく清掃後にワックスをかけたのか、綺麗に磨かれている。
誰が清掃してくれたのだろうか。いや、この場所の清掃を行おうと思うのは、彼女だけだろう。
ふと、厨房の方はどうだろうかとそちらを向けば、奥の扉からちょうど彼女……クローブちゃんが出てくるのが見えた。




