俺とカレーと皆の間にあるもの・其の三
目を開ければ、そこには懐かしい景色なんて広がっておらず、ただ見覚えのない天井が窓から入る夕日に照らされて鮮やかな茜色に染まっていた。
起き上がってみると、寝過ごした時特有のふわりとした間隔と共に軽い吐き気。思わず顔をしかめる。
「まだ、寝ておけ」
不意に横から声がする。見てみるとそこには筋骨隆々の男が一人。ぼやけた頭が少しつづ覚醒していく。
「ウイキョウ?」
「ふん、目が覚めたか」
そこにいたのは店をぶっ壊してくれた事で記憶に新しい、クローブちゃんの弟である少年(?)の姿があった。
その体格では到底座るのに適していないであろうパイプ椅子の上で、彼は口に人指し指を当てた『静かに』のジェスチャーしながら、もう一方の手で左を指差している。
そのまま指差す方向を見れば、窓際で棚を頭に預けて眠っているクローブちゃんの姿があった。
段々と自分に何が起きたかを思い出してきた。
確か、俺は厨房で倒れて……。
「姉さん、少し前まで起きてたのだがな、いい加減寝ないと身が持たないとさっき無理矢理寝かしたのだ」
呆れたようなため息をついて、ウイキョウが呟く。
「まったく、姉さんも姉さんだが、お前もお前だ。仮にも管理者が体調の管理出来ないでどうする」
「……すまない」
なにも否定出来ない。勝手に無理をして、無理な動きをしていたのは、自分だ。
「まぁ、こちらにも非があったんだがな、今回は」
「ん?」
「……いや、なんでもない。後で自分から言うだろ」
一体の何の話をしているんだろう。
気になったが、いまだくわんくわんと揺らんでいる頭が思考を阻害する。
「医者の話では、酷い過労だったそうだ。まだ体が完全になったわけではないからな、無理に起きようとするなよ」
そういってウイキョウは立ち上がる。
そして、ベットの横にコンビニの袋を置く。
「ゼリー、ヨーグルト、それとスポーツドリンクだ。胃の調子はまだ戻ってないだろうからな、食べれるようなら食べるといい」
「無駄に準備がいいな!?」
「ふん……少し慣れているだけだ」
いや、慣れているって……一体何があったんだよ……
「俺はお前が起きたことを首領に伝えに行ってくる。……ねぇさんにそう伝えておいてくれ」
着てきたのであろう、学ランを羽織ウイキョウは荷物をまとめる。
……学生だったのか。
じゃあな、と一言放ってウイキョウは静かに病室を出て行った。




