俺とカレーと皆の間にあるもの・其の壱
藁葺の屋根の間から熱い日差しが、無理やり汗を吐き出せようと俺の肌を照りつけてくる。
そんな中で風鈴を揺らしながら吹く風は涼しく、照りつけられた部分の暑さと交じって、不思議な安心感を与えてくれる。
窓も扉もない吹きさらしとなったフロア、ひんやりとした木で作られた椅子とテーブル。鼻を擽るカレーの匂い。その向うで暑さに負けず商売をしている人、買い物をしている人、楽しそうな人々の歩く姿。
あぁ、いつ以来だろうこの景色を。この匂いを感じるのは。
「――、ほれこれがわしのすぺしゃるカレーじゃ!」
その声に顔をあげれば、もう、何年も会っていない。
もう、合う事のない人の姿。
見上げているのは、俺自身であるけれど、俺では無くて。
「わぁあ! ボク、おじいちゃんのカレー大好きなんだ!」
幼い頃の俺。数少ない、爺さんとの思いである。
その頃の俺の両親は共働きであり、俺は良く学校から帰ると、爺さんのカレー屋さんに向かう事が習慣だった。
今は無くなってしまった、アーケード街の一番端に会った小さなカレー屋さん。
大繁盛とは言えないけど、されとて廃れてはいない。常連は町内の人ばかりで、ほとんど同じ人が来ていた。
というより、あれはもうその人たちの為に空いていたんじゃないかと思えるグラい。常連の人たち以外を見たことが無かった。
爺さんのカレー屋は夕方に開けるため、昼間は基本仕込みをのんびりとしており、俺はその様子を爺さん手製のカレーを食べながら眺めたり、神棚に置かれた小さなテレビでアニメを見ていたりと、のんびりと過ごしていた。
ただ、爺さんの「とっておき」を食べさせてもらった日。その日だけはすこしだけ違がっていたんだった。
あの日は確か俺の誕生日だったはずだ。
誕生日だと言うのに、一向に仕事から帰らない両親に対して不貞腐れた時に食べさせてくれたのだ。




