カレーと正義の交差点・其の十二
俺はその話を聞きながら、静かに彼女と初めて出会った後の事を想い出していた。
ここへの謝罪に、友人を連れてきた彼女。言われてみれば、罪悪感以外に、何かにおびえていた気もする。
だが、それだけで日常で店に来てくれる彼女からそんな事情を浮かぶことが出来るだろうか? 先ほどまでの彼女だって同様で、明るい女子高生そのものだった。
「まぁ、そんな彼女が君を気に入って、仲良くする事はとても良い事だと思うし、寧ろよろしく頼みたい事ではあるんだ」
背伸びをしながら、義正さんはこちらに笑顔をみせる。
「ただね」
本当に瞬きをしたその一瞬、その姿は初めから無かったかの様に目の前から消えてしまう。ただ、声だけは後ろからしっかりと聞こえた。
「……もし、また彼女が悲しい目にあってしまうというなら。俺は、その存在に容赦するつもりは、全くないんだよ。一応、家族同然に関わってきた子だからさ」
再びにじみ出る全身の冷や汗。
あぁ、今度はしっかりと分かる。戦いとかそういうことに関わらない自分でも、はっきりと。
「だから、勝手な言い分かもしれないけど、彼女の事をよろしく頼むよ」
生まれて初めて受けた、自分への明確な殺意。
体を切りつけるようなソレを受けて、吐き気すら感じたが体はピクリとも動かせなかった。
「……簡単じゃ、ないんだ。異能者が居場所を残し続ける事はさ」
殺気は変わらず、だが声は悲壮的に聞こえた。
「……いつか、また異能者と一般人の間の問題は大きくなるだろう。そうならない為に俺は、俺たちは頑張ってきた。だけど、そう簡単に解決できる問題じゃない。ここだって、俺たちの信用が無くなった時、一般人から見たらただの脅威だ。それは彼女も例外じゃない」
重い重い、義正さんの声が心にジワリとにじり寄ってくる。
「……君はさ、いつかそうなった時でも、それでも彼女と今のような関係で居られるかい?」
義正さんは、静かに俺に問う。
難しい質問だった。俺はただの一般人であり、出来る事だって少ない。
気持ちとして彼女の味方で居続けたいが、それをはっきりと言えるような力は持ち合わせていないのだ。ならば、今ただ口で肯定する事は無責任ではないのか。
そう悩んでしまうと、安易に結論をだせる話では決してなかった。だが、義正さんは決してそれを許してはくれそうになかった。そう、殺気が回答を寄越せと突き付けられているように感じた。
「……俺は」
そうして、俺は。




